煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
その後、車内では目的地をどこにするかのせめぎ合いが続いたものの。
結局、多数決で遊園地に落ち着いた。
こうゆう時は優太が俺の味方になってくれんだよな。
…まぁ味方と言うか、単純に優太もにのとまた遊園地に行きたかっただけだけど。
運転しながらチラリ横目でにのを窺うと、意外にも普通の顔をしてて。
スマホを取り出して指を動かすその姿はまさににのの代名詞そのもの。
あれだけヤダヤダ言ってたくせに、決まってしまえばそれはそれで受け入れているようにも見える。
しかも心なしか…
いやだいぶ機嫌が良いような気がするんだけど。
今日のにのは何を考えているのかほんとに読めない。
優太に会うことを楽しみにしてたのは分かる。
でも、行き先が遊園地になってもこれだけ上機嫌なのは他に何か理由でもあるんだろうか。
「へぇ…フリーパスより回数券か」
ふいに隣から小さく呟くにのの声が。
「優太入場料要らないし…あ、4歳以下の子どもの付添は乗り物無料だって」
「…え?」
「だとしたら俺と相葉さんで回数券買って…」
手元のスマホをスクロールしながらぶつぶつ繰り返してるけど。
てっきりいつものようにゲームに耽ってると思ってたのに。
まさか行き先の遊園地について調べてたなんて…
ちょっと…
こいつどんだけ楽しみにしてんの!?
…待てよ。
もしかしてこうなることは分かってたんじゃないの?
こないだの遊園地が散々だったのはにのが一番よく分かってるし。
優太と行く先って言ったら遊園地だろうって、そう踏んでたんじゃないの?
でもにのは優太とは思う存分楽しんだワケだし。
それでもまた優太と会いたい、って言ったってことは…
え、ちょっと待って。
俺とデートしたいってこと?
優太と会いたいのはただの理由付けで、ほんとは俺との遊園地デートを楽しみにしてたんじゃ…
信号が赤になるとすぐスマホを俺に見せてきたにの。
「ね、やっぱそう。回数券がお得みたい」
言いながら俺を見つめる視線を間近に感じつつ、差し出されたスマホを覗き込む。
「良かったね、出費少なく済んで」
そう言ってわざとらしいアイドルスマイルを向けるにのに、決定事項について何も言い返すことは出来なかった。