煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
「うん…なに?」
そう促してからハッとして息を飲んだ。
こうゆう時はいつも人に会話を譲ってしまう癖がある。
相手がにのだと尚更で。
だけど、この話はこの流れじゃないと絶対言えない。
違う話題になってしまったらもうチャンスなんてな…
「いや、だったらさ…俺んち泊まる?」
「っ、えっ!?」
「え?」
思わず大きめの声でリアクションしてしまい、逆ににのに驚かれてしまった。
「ふっ…なにその顔」
「いやっ、その…」
「あの優太よ?俺が居なきゃ相葉さん地獄でしょ」
「っ…」
「どうせ今から行くんだし。
まぁ俺はどっちでもいいけど」
言葉に詰まる俺を余所に一息に言い終えたにの。
ほとんど答えは出ている状態でも、最後の判断は俺に委ねる辺りはいつもと変わらない。
言おうと準備してた言葉を、まさかにのから聞けるなんて思ってもみなかった。
そんなの…
泊まるに決まってんじゃん…!
「…ほんとにいいの?」
「うん…なんで?」
「え、俺もだよね?」
「当たり前でしょーよ。なに?
俺に優太押し付ける気だったの?」
「いや違う違う!」
慌てて否定すると、声を上げてくしゃっと笑うその顔にトクトクと胸の鼓動が高鳴ってきて。
…こんな棚ぼたってある?
にのんちに行けるだけじゃなくて一晩泊まれるなんてさ。
しかも俺がお願いする前ににのからだなんて…
ちょっと待って、やっぱこれってさ…
にのも俺のこと…
「…ジュースのみたぁい」
その時、後ろからぽつり小さく届いた声。
振り返れば、優太が目を擦りながら口をつんと尖らせていて。
寝起きのぼんやりした虚ろな目を俺たちに向ける。
そんな優太の可愛らしい姿に頬が緩みつつ、同時にこんなラッキーハプニングを与えてくれた優太には感謝してもし尽くせないから。
「よしっ、優太!まぁくんがジュース買ってあげる!」
「やったぁ!ゆうたりんごがいい!」
「にのちゃんビールがいい」
「お前は自分で買えよ!」
「まぁくん!にのちゃんもっ!」
「っ、もう…分かったって」
とことんにのの味方な優太にたじろぎながらも、高揚感は募っていくばかり。
遊園地デートからお泊まりなんて…
最高な展開じゃない?