煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
にのんちへ向かう車内で、夕飯をどうするかという話になって。
軽くとは言えさっき食べたばかりだし、まだそんなこと考えられないってにのはボヤいてたけど。
すかさず後ろから優太が『カレーたべたい!』ってリクエストしたもんだから。
じゃあ作って食べようかということになり、キッチン貸すから作ってとにのに言われたけど。
またもすかさず優太が『にのちゃんとつくる!』ってキラッキラの瞳でそう言ったもんだから。
不服そうなにのにほくそ笑んで、とりあえず食材を調達しににのんちの近所のスーパーに寄って。
人目が気になったから、にのと優太は車で待機させて俺が買い出しに行った。
そしてようやく自宅に到着すると、すぐににのが『あ』と小さく呟き。
「…ビール無いわ」
『飲めるでしょ?今日』と残して玄関へ向かうにののその言葉に、お泊まりを実感させられて勝手に胸が高鳴って。
数分で帰ってきたにのにいち早く反応した優太が俺の膝から勢い良く飛び降りた。
「にのちゃぁんおかえりー!」
「ただいま。まぁくんといい子にしてた?」
「いいこしてた!」
脚にぎゅっとしがみ付かれてよろけつつも、目下の優太に優しい眼差しを向けるにの。
その眼差しがふいにソファに座る俺へと向けられて。
「…どうしよっかな。先に優太風呂入れる?」
「えっ?」
突然のそのワードにシンプルに驚きの声を上げる。
「いやずっと外だったしさ。優太もけっこう暴れ回ったじゃない。飯作るにはまだ時間あるし」
そう投げかけられたけど、ここはにのの家だしどう考えても主導権はにのにあると思うから。
「あ、そだね…先済ませちゃおっか。
優太も後で眠くなるかもしんないし」
何となくまだ居心地の悪さを感じていた矢先、にのと少しでも離れる時間が出来るのはありがたい。
風呂でゆっくり心を落ち着かせなきゃな。
「優太、お風呂入ろっか?」
「えー?もう?」
「ん。ご飯の前にお風呂入ろ」
「わかったぁ。にのちゃんと?」
「うん。ほら、行こ」
「まぁくんは?はいる?」
「えっ」
「まぁくんもはいろー」
にのの手を離し俺の方にスタタっと歩いてくる優太。
「まぁくんも」
「えっ、いや…」
「まぁくんも!」