煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
チラッと斜め横に座るにのを見れば、ほのかに耳のふちが赤く染まってて。
だけどまるで聞こえていないかのようにカレーをもぐもぐと食べ続けるにのに、言い知れない期待感がじわじわ募ってくる。
思えば、最近のにのはやたらと俺の傍に居る気がする。
優太に一度会ってからというもの、その類の話で更に会話が増えたのは確かだけど。
なんていうか…気付けば傍に居る。
俺の方がフィルターを掛けてたせいもあって、不必要ににのと一緒になることを避けてたから。
急に指摘されて思いを巡らせてみると思い当たる節なんかいくらでもあって。
え、なに?
…そうゆうこと?
いやどうゆうこと?
プチパニックに陥りそうな頭の中。
優太はもうすっかりテレビに夢中で、さっきの質問のことなんて忘れてるみたい。
にのもそんな優太の笑い声に微笑みつつ、ゆったりとビールを傾けてる。
考えすぎ?また俺の勝手な勘違い?
でももし違ったら…って、今日はそんなこと思ってばっかだよ。
今日のこの疲労感は遊園地だけのものじゃないな。
一喜一憂してる心のほうがかなりしんどくなってる気がする。
…いつになったら俺、にのに言えるんだろう。
また落ち込みそうになる気持ちを奮い立たせようと、思いっきりカレーをかき込んでビールをぐいっと煽った。
***
最後の皿を洗い終えて水栓レバーをきゅっと上げると、さっきまで騒がしかった優太の声が聞こえなくなっていて。
リビングへ目を遣れば、ローテーブルの奥のスペースにごろんと寝転がった小さなかたまり。
そのすぐ傍に、添い寝するように腕を枕にして寝そべるにのの後ろ姿。
規則正しく聞こえてくる優太の寝息に合わせて、とんとんとお腹にゆっくりとリズムを刻んでいる。
「寝ちゃったね」
そっと傍に近寄って声を掛けると、こちらに振り向いてふふっと笑みを溢した。