煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
「にの…おしり…」
後ろからポツリ呟いた大野さんの声に意識を取り戻すと、今の自分の格好にハッとした。
足首にスウェットを纏わらせたまま、四つ這いの状態でむき出しのお尻を大野さんに向けていて。
うわわっ!
やべっ…!
慌ててパーカーの裾で隠しながらぺたんと床に腰を下ろす。
が、時すでに遅し。
「…ねぇ、どんだけ煽んの、」
余裕のない声に振り返ると、眉を寄せて苦しそうな表情を向ける大野さんがこちらを見ていて。
そして、白濁のついた左手を床につけないように器用に四つ這いをしてこちらににじり寄ってきた。
俺の手からティッシュを取ると丁寧に左手を拭いて、パーカーを捲って俺の腹も拭いてくれた。
「…俺もう我慢できないんだけど、いい?」
「え…?」
小さく声を出すと、返事を待たずに大野さんが俺にゆっくりと覆い被さってきた。
え?ここで…?
そう言葉に出そうとした途端、唇を重ねられる。
有無を言わさないような口づけに、頭の中の疑問符はすぐにどこかへ行ってしまった。
唇を割られて舌を絡ませ、口内を攻められる。
大野さんて案外積極的なんだ、なんてアルコールでぼんやりする頭で考えていた。
「にの…俺のも、触って…?」
キスの合間に、近い距離で囁かれる。
ちらっとそこに目を遣ると、ジーンズのその部分が窮屈そうに主張していて。
「ん…」
こくり頷いて体を起こす。
初めて触れる、大野さん自身。