煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
「良かったじゃん、とりあえず色々」
ペアでの雑誌撮影の合間。
テーブル上の小さいチョコレートを口にぽいっと入れながら、松潤が呑気な声で隣に座ってきた。
「いやてゆうかさ、松潤どうゆうこと?
どこまで知ってたの?」
澄ました顔でもぐもぐと口を動かす松潤の横顔に、自覚するくらい怪訝な顔で問い掛ける。
「知ってるも何も…ニノだよ。
ニノから全部聞いた。つぅか聞いてた」
うん、と一人納得するように頷いた後、自然な動作でスマホを取ったかと思えばフツーに弄りだして。
…いやいやちょっと待ってよ!
聞いてたってなに…
「ちょ、どうゆうこと?にのから何聞いて…」
「ほら見て、これ」
ふいに言葉を遮られたと同時に、ずいっと目の前に差し出されたスマホ。
そのLINEらしき画面には、丸い顔の人がめちゃくちゃ怒ってるスタンプが一つ貼られていて。
「こないだの遊園地でさ、みんなに写真送ってくれたじゃん?そんでつい『ニノ良かったな』って言っちゃったらソッコーこれ送られてきた」
って肩を揺らして笑いながら見せてくれてるその画面の上部には『ニノ』と記してある。
「…もうさぁ、やっとだよ。
いつまでもうじうじ悩んじゃってさ。
大丈夫だって言ってんのに」
「…いや、なに…」
「つぅか相葉くんにも責任あんじゃないの?
避けてたんでしょ?ニノのこと。
意外とヘコんでたよ?」
さっきから松潤の言ってることがイマイチ理解出来ずにいたけど、なんとなく分かってきた。
いや完全に分かった気がする。
え、待って…
にの、松潤に相談してたの…!?
「相葉くんと接点持ちたくて優太に会いたいってアピールしてたんじゃん。あ、しかもさ。あ~…これ言っちゃダメなやつか」
驚きを隠せない俺を余所に、わざとらしく口元に手を遣って考えるフリをする松潤。
「…ふふっ、まいいや。ニノさ、優太のこと相葉くんにしか見えないっていっつも言ってたからね」
「えっ?」
「ちっちゃい相葉くんがすげー懐いてくれてんの超嬉しかったみたい」
『これ絶対言っちゃダメなやつだわ』って言いながら楽しそうに笑う松潤の言葉に、じわじわとむず痒いような熱いものが込み上げてきて。