煩悩ラプソディ
第33章 お熱いのがお好き/AN
2時間強で終わった飲み会。
お酒もほどほど、盛り上がりもほどほど。
でも、今の俺にはこれくらいが丁度良かった。
エントランスに着いて流れるようにドアを解錠し、エレベーターに乗り込む。
ぐぅんと上がる感覚が酔ってる体には少しキツイ。
思い出したようにポケットからスマホを探り、ほんの少しだけ期待してボタンを押しても。
明るくなった画面には、やっぱり新着のメッセージはない。
…メッセージもできないくらい忙しいの?
なんて、ついポロリと本音が出てしまう俺は今、どうしようもなく相葉さんが足りてないって思い知らされる。
分かってるつもりでいて、全然分かろうなんてしてない矛盾してる頭の中。
…会いたいよ、相葉さん。
ゆっくりとエレベーターが停まり、扉が開くとすぐに現れるドア。
…こんな夜はひたすらゲーム三昧だ。
明日は昼からだから思う存分熱中してやる。
そう内心ヤケになりつつ、ドアの鍵を開けて中に入った瞬間。
…っ!
リビングの灯りが暗い廊下に洩れていて。
玄関ポーチに目を落とせば、見慣れた靴が無造作に脱ぎ捨ててある。
思いがけない展開に心臓がどくどくと早鐘を打ちだす。
嘘でしょ…
相葉さん来てんの…!?
駆け出したい衝動を何とか抑え早足で廊下をすり抜け、リビングの扉をがちゃっと開けたら。
しんと静かな部屋には、人が居る気配は全く感じられない。
見渡しても、今朝出たそのままの部屋がそこにあるだけ。
でもふと目に入ったそれに、一瞬で期待が確信に変わった。
ローテーブルに置かれた缶ビールと、食べかけのビスケットのかけら。
完全に相葉さんの痕跡がそこにはあって。
まるで宝探しでもしてるみたいな気分で、緩む頬を摩りながらまずは寝室へと足を運んでみる。
僅かに開いた扉にピンときて。
そっと押しながら中を覗くと、案の定ベッドに丸まった相葉さんの姿が。
音を立てないように近付き、その顔を覗き込む。
すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てた、完全に熟睡してる時の相葉さんの寝顔。
しかも、俺の枕を抱きかかえるようにして口元を埋めてて。
そんな相葉さんの姿に、途端にきゅっと胸が締め付けられる。