煩悩ラプソディ
第33章 お熱いのがお好き/AN
居酒屋特有の匂いを消したくて、とりあえず風呂を済ませてまた寝室をそっと覗き見た。
もしかしたら俺に気付いてリビングに居るかもって思ったけど、ベッドにはさっきと同じように丸まったかたまりが。
そんなにぐっすり寝るほど疲れてんだよなぁ…
最近の睡眠時間が短いのは知ってた。
一緒の仕事の時はそんな素振りはあんまり見せないけど、いつもの笑顔の影に疲れが見え隠れしてるのは気付いてたから。
…なのに会いに来てくれたんでしょ?
俺が寂しがってると思って。
驚かせてやろうってわざと連絡しないでさ。
んで来てみたら俺居なくて、しょうがなしにビールでも飲んで待ってようって。
終いには待ちくたびれて俺のベッドで電池切れ、ってワケか。
すぅすぅと寝息を立てる相葉さんに近付き、暗がりの中その寝顔を覗き見る。
…俺だって会いたかったよ、相葉さん。
静かな部屋にこだまする寝息。
ここに相葉さんが存在してるってだけで、胸がじんと熱くなってくる。
ついでに、アルコールの入った風呂上がりの身体にもその熱は伝染してきたみたいで。
横向きで眠る相葉さんの反対側に回り込み、音を立てないように静かにベッドに上がり。
布団を捲ってそっと忍びこめば、すぐに相葉さんのこもった体温が伝わってきた。
せっかくの睡眠を邪魔しちゃ悪いからと思う反面、すぐ目の前の背中に触れずにはいられない。
息を潜めて擦り寄り、ぴとっと背中に体をくっつけると。
その大きな背中から規則正しい呼吸が伝わってきて、ひどく安らぎを覚える。
すぅっと鼻から息を吸えば、いつもの相葉さんの匂いが鼻を擽って。
目の前にある整ったうなじに、堪らなくなって顔を埋めた。
…ね、相葉さん。
俺ね…
…やっぱ寂しいみたい。
くっついてるだけなのにこんなに満たされるなんて。
心地良い寝息も、安心する匂いも。
いつもと変わらないこの背中も。
俺にとってどれだけ必要で、無くてはならないものか。
ねぇ…相葉さんは?
俺のことさ、俺と同じくらい必要に思ってる?
なんて、いつもはこんなこと思わないのに。
目の前で感じる相葉さんのリアルな体温に俺の欲求のスイッチは壊れかけてんだ。