煩悩ラプソディ
第33章 お熱いのがお好き/AN
収録を終えて楽屋で帰り仕度をしていると、ドアがノックされてガチャリと勢い良く開いた。
「お疲れさまっした!ねぇこの後さ、飲みとかどう?」
挨拶もそこそこに誘ってきたのは、よく共演する仲良くさせてもらってる芸人さん。
「あ~…ごめんなさい。今日はやめとく」
『お疲れっしたー』と交わし緩く手を振って見送ると、テーブルに置いていたスマホを手に取り。
そこに映ったさっきと変わらない画面に勝手に口が尖ってしまう。
相葉さんの忙しさは相変わらずで。
だけどあの日以来、相葉さんは合間を縫って俺に連絡をくれるようになった。
ほんとはさ、こんなの良くないって分かってるよ。
只でさえ忙しいあの人に余計な気を遣わせてしまってんだから。
今は俺が支えてやんなきゃいけないのに。
…だけどさ、こうなることは分かってたんだ。
俺が寂しさをぶつければ、優しいあの人のことだからちゃんと応えてくれるって。
それを分かっててあの時の俺は相葉さんを求めた。
頬杖をついて相葉さんとのLINEを眺める。
《にのー、今日は行けると思う!
遅くなるかもだけど待っててね》
朝送られてきてたそのメッセージ。
嬉しくてすぐ返信したけど、それにはまだ既読はついてなくて。
…こんな感情も良くないって分かってる。
でもさ、もうダメなんだよ。
俺ね、どんどん欲深くなってんの。
もっともっとって。
…ねぇどうしたらいいの?
ぼんやりと画面を眺めていると、俺のメッセージにパッと既読が付き。
やっと撮影終わったのかなと思ったら、その数秒後に現れた吹き出しに思わず椅子から立ち上がった。
《にのまだ?合鍵忘れたから早く帰ってきて!》
恐らく俺んちのマンションの下で打ったであろうその文面。
もしかしてまた連絡せずに来て驚かそうとでもした?
「も~遅くなるっつったじゃん…」
ぽつりボヤきつつ緩まっていく頬は抑えきれなくて。
《今から帰る。何で返信しないのよ》
《え、サプライズのがいいかなって。気をつけてね!》
思った通りの相葉さんのメッセージに笑みを溢し、キャップを目深に被って足早に楽屋を後にした。
…ねぇ相葉さん。
やっぱり俺ね、寂しいみたい。
だからさ…
end