煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
「なに相葉くん、そうゆうの好きだったっけ?」
授業の合間の休み時間、トイレから戻ってきた松潤にスマホを覗き込まれた。
「っ!勝手に見んなよっ」
「あ、ごめんごめん」
ふふっと鼻で笑いながら前の席に座ると、何か言いたげな大きな瞳がこちらを見て。
「…なに、路線変えたの?」
それが笑いを堪えるような表情に変わり、ズバリ言い当てられ慌てて手を振った。
「ちっげーよ!そんなんじゃなくてっ!
ちょっとね…」
「ちょっとなに?」
「いや気になるっつーかさ…」
「つーかなに?てかコイツ男じゃん」
「っ…そうだけど、」
ニヤニヤした笑みを浮かべながら質問攻めされて、堪らず口を噤んだ。
スマホに映っているのは、この間ライブで観たあのアイドルの男の子。
あの後どうしても気になって、必死に情報をかき集めてようやく辿り着いたんだ。
名前は『二宮和也』。
『かずや』じゃなくて『かずなり』って読むらしい。
歳は16歳で、やっぱり俺の一つ下だった。
今年デビューしたてのフレッシュなアイドルで、なんでも事務所が100年に一度の逸材と称して猛プッシュしてるみたい。
確かにそれも頷ける。
だって女の子ならまだしも、男の俺でさえも虜にしてしまうくらいなんだから。
…って俺『虜』とか言っちゃってるし。
いや現に、俺は二宮くんにハマりまくっている。
あれからというもの、バカの一つ覚えのように二宮くんの情報をネットで検索する日々。
だけどまだそんなに情報はなくて、見つけた数枚の写真を代わる代わる眺めるのが日課になっていて。
ほら、この萌え袖で頬杖ついてこっち見てる瞳なんてもう…
「おーい」
前から低いトーンで呼ばれてハッと我に返る。
顔を上げれば、松潤が優しい笑みで俺の肩にポンと手を置いた。
「大丈夫だから。俺べつに相葉くんがそうゆう趣味だからって友達辞めたりしないし」
「…は?えっ?」
「ま、来年受験だからほどほどにしときなね」
そう言ってまた肩をポンと叩かれたタイミングでチャイムが鳴り、くるりと前を向いてしまった松潤に何も弁解できなかった。