煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
その日、俺の元へ舞い込んできた嬉しいニュースに朝からニヤけが止まらなかった。
来月、地元の大型モールに二宮くんがイベントで来るらしい。
しかもその情報を持ってきたのは親友の松潤で。
松潤の母ちゃんがそのモールに入ってる店で働いてるらしく、一足先に情報を入手できたんだそう。
けっこうバカにされてると思ってたのに、やっぱ持つべきものは友だよな。
どうしよう、二宮くんにまた会える…
しかも今度はイベントだから、ライブよりもっと近くで二宮くんを観れるかもしれない。
うわぁやっべ…
今からドキドキしてきたっ…!
前の松潤の背中を壁にしてこっそりスマホを覗き見る。
待受け画面にしてる二宮くんのキラキラの笑顔に捉えられ、それだけで胸が高鳴ってきて。
「くふふふ…」
思わず漏れてしまった声に振り返った松潤から『気持ちわる…』って怪訝な顔されても気にしない。
まさか俺がこんなアイドルにハマるなんて1ミリも思ってなかった。
しかも男のアイドルなんかに。
もちろん俺は女の子が好きだし、今までだって女の子を恋愛対象として見てきた。
でもあの日、ステージで二宮くんを観た時から俺の中で何かが変わったんだ。
あのキラキラ輝く光の中で一生懸命唄って踊って、とびっきりの笑顔を向けて。
ガンガンにロックな完全アウェイなあの会場を、一瞬で二宮くんの色に染め上げてしまったんだから。
これが『堕ちる』ってことなんだって、初めて身を持って体験したような気がして。
そう、だから。
別に男とか女とかそうゆう次元の話じゃなく。
多分俺は純粋に『二宮和也』を応援したいんだ。
これからもっと輝いていくであろうその姿を、今の内からしっかりと目に焼き付けておきたい。
ってまるで二宮くんの保護者にでもなった気分だけど、何となくその感覚に近いかもしれないなって。
歳も近いし、親っていうよりは兄ちゃんみたいな感じかな。
兄ちゃんって…ふふ。
自然とニヤける頬を自覚しつつ、手元で急にぶるっと震えたスマホに目を遣れば。
潤《いい加減キモイぞ》
という松潤からのLINEがポップアップされ、慌てて頬を摩って落ち着かせた。