煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
衝撃の出会いから一夜明け、どうしてもこの事実を誰かに伝えたいと真っ先に向かったのは松潤の席。
昨日の出来事を興奮気味に伝える俺の話を、頬杖をついてうんうんと相槌を打ちながら聞いている。
「でさ、二宮くん実家があの辺らしくてさ!
しかもあのコンビニたまに行くって!」
「へぇ~」
「来月のイベント行きますって言ったらちょー喜んでくれたの!」
「ふぅん、そりゃ良かった」
「でさでさ握手もして貰ってさぁ!
もう手ぇ震えちゃっ、」
「相葉くん」
興奮の余り松潤の手をぎゅっと握った時、くい気味に名前を呼ばれ遮られた。
「…あ、ごめん」
「いやそうじゃなくて。相葉くんさ、もちろん自分の立場分かってるよね?」
すぐに手をパッと離したけど、松潤が言いたかったのはそれじゃなかったみたいで。
その先の言葉を無言で待っていると、はぁと小さく溜息を吐かれた。
「あのね、本物の二宮くんに会えて嬉しいのは分かるけどさ、あっちだって仕事でやってんだからね?」
「…仕事、」
「そう、アイドルは二宮くんのお仕事なのね。
俺らに見せてる姿はアイドルの二宮くん」
「…うん」
「だから相葉くんはアイドルとしての二宮くんを応援してればいいの。
プライベートなんて知る必要ないでしょ」
「いやでもっ…」
反論しようとする俺に、眉間に皺を寄せていつも濃い顔をもっと濃くさせて続ける。
「つーかさ、この調子じゃ絶対あのコンビニに入り浸るよね?」
「っ…!」
「ほらね。だめだめ、絶対だめ。ファン以上の関係を望むとかぜーったいあり得ない」
手をひらひらとさせて顔を振る松潤に、ついに何も言えなくなってしまった。
松潤の言う通り、昨日出会ってから二宮くんとどうしても接点を持ちたいという想いが膨らんでいって。
とりあえずあのコンビニの常連になることが第一だと考えていた矢先、松潤から痛烈な批判を浴びてしまった。