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煩悩ラプソディ

第34章 君の瞳に恋してる/AN






「でもちょっとくらいは…」

「それがだめだっつの」


ぼそっと呟いただけなのにすぐ拾われてソッコー突っ込まれた。


「だって仮によ?二宮くんと友達にでもなったとするじゃん。
んで相葉くんがすげー二宮くんにつきまとってさ、もうウゼーなって思われたとするじゃん」

「そっ、そんなことしねぇしっ!」

「仮だって、例えばの話ね。それで向こうが急に友達辞めたいなんて言い出したらどうすんの?つーかそんなこと普通言わないけど。急に無視されたりしてさ」

「そんな…二宮くんはそんな子じゃ…」

「ほらそれ。だからそれでいいじゃん。
相葉くんの中にある二宮くんだけを見てればいいんじゃないの?本当の二宮くんなんて知る必要ないでしょ?」


腕を組んでつらつらと連ねる松潤の言葉には、何だか妙に説得力がある。


「結局傷付くのは自分でしょ。だったら最初からそんな関係にならない方がいいって」


『分かった?』と念を押すように言われ、言いたいことはあったけどその目力に抑えられて何も言い返せなかった。



授業中も松潤の言葉がぐるぐると頭ん中を巡ってて。



確かに二宮くんだって困るのかもしれない。


俺なんか大勢いるファンの内の一人ってだけだし。


そもそも俺は二宮くんを応援する為にファンになったんだ。


友達になりたいとか、近付きたいとかそうゆうことじゃなかったハズ。


そうだよな、友達になったとしても頻繁に会えたりするワケもないし。


二宮和也と友達だなんて、それこそ他の友達には絶対言えないし。


やっぱりそっか。
俺と二宮くんは友達にはなれない。


…なっちゃいけないんだ。



そう改めて考えると、なぜか無性に悲しくなってきて。


悲しいというか胸が痛いというか。


何だかよく分からない感情が心を覆い尽くす。


それはただぼんやりと輪郭をなぞるだけで、肝心な中身に辿り着く前に掻き消されてしまったような。


昨日間近で見たあの瞳と、ふっくらした感触の小さな手と。


俺だけに向けられた柔らかな笑顔は、本当の二宮くんじゃなかったのかな。


またチクっと胸が痛む。



なんか一方的に失恋しちゃった気分だな…


いや失恋だなんて大袈裟か。



これって…


この気持ちってさ。



恋に似てんのかなぁ…

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