煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
胸を上下させて荒い息をする大野さんを見上げると、俺の顔を見るなり目を大きく見開いた。
「…えっ!?ちょ、にのっ!
ごめ、なんで!?」
オロオロして俺の顔に触ろうとする大野さん。
うろたえすぎて、何言ってんのか分からない。
慌ててソファから跳ぶように下りて、ティッシュを数枚抜き取って戻ってきた。
「ちょ、なにしてんの…もう、」
困ったように眉を下げてそう言いながら、頬や目元、口元についた白濁を丁寧に拭き取ってくれる。
「いや…受け止めようと思ったのよ。
けど…間に合わなかったの」
「も、そんなことしなくていいから…」
全部拭き取ると、ふいに目線を俺の顔から下に落として小さく頬を緩ませた。
「…あ、にのも気持ち良かったの…?」
そこには、パーカーの裾を押し上げて主張している俺自身。
さっきイったばかりなのに、大野さんに煽られてまたも英気を取り戻したようだ。
そりゃあんな顔されて…
あんな声出されたら…
元気になっちゃいますって。
アルコールがだいぶ回ってきてるようで、頭も体もフワフワする。
ジンジンと疼く自身を自覚しながら、大野さんの目を覗きこんだ。
「…ね、シよ?」
さっきまでの恥ずかしさはどこかにいってしまったようで。
こんなこと言う俺がいたなんて自分でも不思議なくらい。
フワフワとジンジンが、俺の頭と体を正直にしている。