煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
イベントブースには次第に人が集まり始め、周りを見渡せば同年代の女の子達でいっぱいで。
その中で唯一の男は俺と松潤だけで、しかも最前列に陣取ってるもんだから目立ちすぎて周囲から注目を浴びるハメに。
「…ねぇ相葉くん、俺あっちで座ってていい?」
「えっ、なに今更!観てみたいんじゃなかったの?」
「いやだってさ…」
明らかに場違い感ハンパないこの状況は、ファンでもない松潤にとってはただの地獄なんだろう。
「とりあえず最初だけでも一緒にさ、ねっ!」
「う〜ん…」
「女の子に囲まれてんだからいいじゃん」
「いやそうゆうことじゃなくない?」
顔を顰めてぶつぶつ言ってるけど、周りの女の子達の視線が自分に向いてんのは気付いてないみたい。
松潤だってウチの学校じゃイケメンで有名なんだ。
そりゃ女の子達も気にならないワケないよね。
居心地悪そうな松潤の横顔に笑みをこぼした時、小さなステージの裏から司会のお姉さんが登場した。
いよいよ二宮くんに会える…!
そう思ったら急に心臓がドキドキと早まりだして、押し迫るその瞬間が待ち遠しくて仕方ない。
やがてお姉さんの紹介と共にステージの照明がパッと変わり、軽やかなピアノの前奏が流れると一斉に甲高い声援が上がって。
そしてステージ袖から舞うように姿を現したのは、キラキラの笑顔の二宮くん。
その瞬間、あのライブの日が蘇って一気に熱が込み上げてきて。
手を振ったりピースをしながら女の子達の声援に応える可愛らしい仕草。
俺も負けじと全力で手を振って、周囲の歓声に紛れつつもその名前を呼んでみた。
そしたら。
一瞬探すように視線を彷徨わせたと思ったらバチっと目が合って。
完全に俺に向けてにこっと微笑んで、ひらひらと手を振ってくれたんだ。
その笑顔と仕草が堪らなく可愛くて、マジで心臓が止まるかと思った。
ぎゅっとTシャツの真ん中を握り締めて、治まらない動悸に何とか耐える。
今俺に手振ってくれた…
確実に俺に笑いかけてくれて…
もう、やば…
「へぇ〜やっぱオーラあるね。
ね…って、ちょっと相葉くん大丈夫?」
胸を押さえる俺を心配そうに窺う松潤。
…いや全っ然大丈夫じゃない。
もう嬉しすぎて倒れそうなんだけど…!!