煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
「えっウソ!そうゆうことなの!?」
思わずボリュームを間違えてしまい、店内の客の視線が一斉に俺達に集まった。
慌てて両手で口を押さえる俺をひと睨みし、ふんわり笑いながら『すみません』と周囲に会釈する松潤。
「…だからそうゆうことじゃないの?
相葉くんがあの日イヤホンしてたから」
「ちょ…それってさ、俺のこと覚えてるってこと?」
「そりゃそうだろうね、男のファンって珍しいだろうし」
『しかも今日真ん前に居たし』ってストローを咥えてすらりと言ってのける。
さっきの握手会での二宮くんのことを松潤に話したら、すぐにそんな答えが返ってきたからびっくりして。
あの耳を押さえた可愛い仕草は、俺がイヤホンで二宮くんの曲を聴いてたから?
それを覚えてくれてて、俺だけに伝わるようにジェスチャーしてくれたってこと?
なにそれ…
ってことはさ、もう二宮くんは俺のこと認識してくれてんじゃん!!
「うっわぁなんだよ~!じゃああんなこと書かなくて良かったんじゃん!」
「は?なに?なんか書いたの?」
間髪入れずにそう突っ込まれて、また慌てて口を押さえた。
あっぶね…
松潤にファンレターのこと言ってなかったし…!
「まぁでも…」
そんな俺に松潤は一瞬眉を顰めたけど、ポテトをぱくりと口に放って続ける。
「相葉くんが入れ込むの分かる気がするわ。
確かに可愛かったもんね」
「っ、でしょ!?やっぱ分かってくれるよね松潤は!」
「でも俺は女の子がいいけどね」
「いや待って、俺だって女の子が好きだし」
「へぇ~」
「おい!信じろって!」
あからさまにニヤニヤする松潤に必死に反論しても、全く動じずにポテトを摘まんでて。
「相葉くんさ、いい加減認めたら?これはもう恋だよ」
「え…?」
「そうだろうと思ってたけどさ、今日の相葉くん見て完全に分かった」
そしてテーブルに腕を組み、ぐっと顔を近付けてくる。
「…恋しちゃってるね、君」
ニッと口角を上げてそう言い終えると、また背凭れに体を預けた。
普通ならここでまた反論でもするんだろうけど、何故かそれが出来なくて。
だって、松潤のその言葉がやけに自分の中にストンと落ちてきたんだ。
そっか…そうだよね。
やっぱりこれって…
恋だよね…?