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煩悩ラプソディ

第34章 君の瞳に恋してる/AN





二宮くんへの想いがファンとしてのそれではなく、完全に恋だと気付いてからというもの。


どうしても二宮くんに近付きたいという欲求が日に日に増してきていて。


自分の中で気付いてない、認めてないフリをしてきたこの気持ち。
だけど、他人に言われたことでようやく許してもらえたようなそんな感覚で。


松潤には相変わらず牽制をかけられている。


いちファンとしてでもダメなことなのに、好きになったから近付きたいなんて言語道断だって。


そんなことわかってるよ。


わかってんだけどさ…


あれからコンビニで何度か見かけたけど、声を掛けずにぐっと堪えてきたんだ。


頑張れば手が届くところに居るのに、それすらも出来ないなんて苦しくてしょうがない。


こうなるとさ、二宮くんがアイドルでいる限り俺の恋は永遠に実らないってことだよね。


いや…その前に大きな壁があった。


俺と二宮くんは"男"なんだってこと。


アイドルだからとかの前に、俺はそもそも二宮くんの恋愛対象にはなれないはず。


だって俺も女の子が好きなんだし、今までも女の子としか付き合ったことはない。


でも、俺にとっての二宮くんはそんな次元じゃない気がするんだ。


きっと…
二宮くんだから好きになったんだって。


もはや性別なんて気にならないくらい、俺は二宮くんを好きになってしまってる。


ファンとして応援するって決めたクセに。


こんなに溢れそうな気持ちを隠し通すなんて…
もうこれ以上出来そうにないよ。



電車に揺られながらイヤホンを耳につければ、耳障りの良い軽快なテンポと少し高めの歌声が流れだし。


もう何回聴いたか分からないこの曲は、俺が二宮くんを知ったきっかけの曲。


雷が落ちたくらいの衝撃は、嘘なんかじゃなかったんだから。


真っ黒な車窓に頭を預け、流れゆく街の灯をぼんやり見つめて。


脳裏に浮かんでくるのは、歌声と一緒の少し高めな声で発せられたあの日の『ありがとう』。


それと俺だけに伝えてくれた可愛らしいジェスチャー。


そんな二宮くんの仕草や表情の一つ一つが、こんなにも忘れられないんだ。


きゅっと胸が苦しくなると同時に、この燻ぶった気持ちのやり場がどこにも無くて。


明るいその歌声を聴きながら、スクールバッグを抱き締めて無理矢理に目を瞑った。

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