煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
顔色一つ変えずにそう質問され、ドキンと胸が跳ねる。
なんでこの人俺のこと…
「相葉雅紀はコイツです」
「っ、ちょっ…!」
指を差しながらすんなり答える松潤に焦っていると、イケメンスーツが俺に向き直ったのを察した。
「あなたが相葉さんですか…
申し遅れました。私、二宮和也の所属事務所の櫻井と申します。突然ですが、今から少しお時間を頂くことはできますか?」
ひと息に言い終えて返事を待つその人は、相変わらず顔色を変えずにジッと俺を見つめていて。
ちょっと待って…
二宮くんの関係者の人?
え、なんで?
俺なんかしたっけ…!?
二宮くんのワードとこの関係者の人の雰囲気からして、なんかヤバい予感しかしないんだけど。
蛇に睨まれたカエルのように動けないでいると、隣から助け舟を出してくれたのは松潤で。
「えっと、サクライさん?すみませんけど名刺とか頂けます?」
ニコッと微笑みながら手を差し出す松潤に、サクライさんが『これは失礼』と言いながらスーツの内ポケットに手を差し入れる。
「…話ってなんです?ここじゃダメなんですか?」
「ええ、ここでは目立ちますし、出来れば場所を変えたいのですが」
「じゃあ僕もいいですか?僕は彼の友人で松本といいます」
「ええ、勿論です。松本さんもぜひ」
あわあわする俺を前に繰り広げられる会話。
松潤は真剣な顔でサクライさんを見据えている。
サクライさんもそんな松潤から目を逸らすことはなく。
「…では、行きましょうか」
張り詰めた空気がふっと緩まったのも束の間、サクライさんが間髪入れずに後部座席のドアを開ける。
急な展開にその場から動けない俺に、ドンっと後ろから体をぶつけてくる松潤。
振り向くと、ニッと口角を上げながらパチッと綺麗なウインクをされて。
そんな松潤の優しさと頼もしさに泣きそうになりつつ、グイグイと車に押し込まれた。