煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
そうやって二宮くんへの想いが増せば増すほど、自分の中に芽生えてきた感情。
この気持ちを伝えたい、だけど拒否されたらどうしようって。
意気込んで進んではまた振り出しに戻る、まるですごろくゲームのような日々。
そんな中告げられた櫻井さんの言葉に、正直俺はひとマスも進めずに立ち止まってしまったんだ。
とにかくさ…と隣でぽつり呟く声に顔を向けると。
「これはさ、二宮くんから直接言われたワケじゃないでしょ?だったら本人に確かめればいいじゃん」
「いやでも…近付くなって、」
「あんなのハッタリだろ。それとも何?相葉くんあんなこと言われてビビったの?」
「っ、そんなんじゃ…」
「え?相葉くんの気持ちってその程度なの?」
「っ…」
歩きながら視線を寄越すその瞳は、逃れられない程まっすぐで。
畳み掛けるような言葉が胸に突き刺さる。
やじろべえみたいに振れながら、なんとか釣合いを保ってきた俺の心。
それが松潤のその一言で一気にグラついて、立ち止まるどころか今にも倒れてしまいそうで。
「…相葉くんはさ、二宮和也が好きなんだよね?」
「…え、」
「真っ向から好きなんでしょ?二宮くんのこと」
「っ、うん…」
「だったら立ち向かえよ、真っ向から。
あんなに一生懸命応援してたじゃん。
その意気どこいったんだよ」
そう続ける口調はとても穏やかなんかじゃないのに、滲み出る松潤の優しさがじんわりと染みてくる。
奈落の底に突き落とされた後に掛けられたその言葉に、思わず熱いものが込み上げてきて。
そんな俺を見てフッと肩の力を抜き、こめかみをポリと掻きながらまた口を開き。
「まぁ…確かにブレーキ掛けてたのは俺だと思うけどさ、こうなったらそんなの知ったこっちゃないし」
「…へ?」
「いけるとこまでいこうよ、相葉くん。俺が許す」
そう言ってうんと頷いた松潤は、腹を摩りながら『ラーメン食い行かない?』と言って俺の返事を待たずに歩調を速めて。
慌ててその背中を追いながら、胸に広がっていく温かさに何となく腹も空いてきたような気がした。