煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
控え室代わりの生徒会室の窓から外を覗いてみる。
視線の先には手作りの看板を掲げた模擬店や、仮装をした人々が風船を配る様子が映し出されて。
楽しそうな笑顔で溢れたその光景に、こっちまですっかりその気になっちゃいそう。
初めて学園祭に呼んでもらって、お仕事だけどこの日を迎えるのが待ち遠しくて仕方がなかった。
昨日もなんだかワクワクして寝付けなかったくらい。
まるで遠足の前日のような気分で。
今週はまだ一度も学校に行けてなかったから、この一段と華やかな雰囲気に自然と笑顔が溢れる。
…よし、今日も頑張らなきゃ。
そう小さく意気込んだ時、部屋のドアがノックされ呼びかけられた。
返事をすると数人の生徒さんが入ってきて。
学園祭の実行委員と名乗られたから、よろしくお願いしますとお辞儀をして今日の流れの説明を受ける。
実は今日は翔さんが別のお仕事で居なくて、違うマネージャーさんなんだ。
やっぱりいつも居てくれる翔さんが居ないと思うとちょっぴり不安で。
だからって訳じゃないけど、何となくいつも以上に細かく段取りを確認したくなる。
詳細を聞くと、今日は実行委員さんたちの計らいで着ぐるみのバックダンサーを準備してくれてるらしくて。
きっとこの日の為に、一生懸命練習してくれたんだろうな。
どうやらその着ぐるみたちと、ステージに立つ前にちょっとした写真撮影があるみたい。
学校の生徒会誌に載せる為のものだって。
何度も確認してタイムスケジュールを必死に頭に叩き込むと、撮影をしに実行委員さんに誘導されて控え室を出た。
『立入禁止』のテープをくぐって通されたそこは、校舎と校舎の間の中庭みたいな場所で。
すると、すぐ目に飛び込んできたのはカラフルな着ぐるみたち。
その中で一際目を引いたのは大きなきりんさん。
多分中の人も大きいんだろうけど、きりんの頭がみんなより飛び出ててちょっと迫力すらある。
そんな着ぐるみたちが手を振って迎えてくれたから、何だか嬉しくて照れ臭くて小さく手を振り返しながら近付いた。