煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
その事実だけでもう胸がいっぱいになる。
いや、まだ二宮くんにちゃんと確認した訳じゃないんだけど。
それに、一番肝心なことを忘れちゃいけない。
今日は…
今日こそは二宮くんに、真っ向から俺の気持ちを伝えるんだ。
段々と落ち着きを取り戻したらしい二宮くんは、俺の腕の中に大人しく収まっている。
さっきからバクバクとうるさい心臓の音は、こんなにも密着してる二宮くんにもきっと伝わっているはず。
普段から他人より良い代謝に拍車が掛かり、背中を幾度となく汗が伝う。
賑やかな声が遠くから聞こえてくるけど、ここには俺たちの小さな息遣いしか存在してなくて。
ごくりと唾を飲み込む。
後頭部に添えていた黄色い手をそっと外して肩に移動させれば、ぴくりと反応した二宮くんの髪が頬を擽った。
「…あの、二宮くん…」
抱き締めたまま耳元で呟くと、きゅっと身を竦めておでこを俺の肩に押し付けてくる。
その仕草が可愛くて、心臓がまたどくどくと波打って。
そんな二宮くんのひとつひとつの俺への態度を前向きに捉えれば。
もうこのまま突き進んでもいいんじゃないかって。
後先なんて考えずに、ありったけのこの想いをぶつけてみてもいいんじゃないかって。
「…急にこんなこと言ってどう思われるか分かんないけど…」
それでもいいんだ。
それでも伝えたい、どうしても。
「俺…二宮くんを初めて見た時、頭に雷が落ちてきたんだ」
静かにそう告げれば、そのままじっと動かずに聞いてくれていて。
「…今思えばもう、その時だったかもしれないんだけど」
衝撃の出会いからファンになって、ただ二宮くんを応援していたあの頃。
でも、本当は俺だって分かってたんだ。
この想いは止められない。
この想いは質が違うんだって。
「本物の二宮くんにコンビニで会ってから…
それからは…俺…」
ぎゅっと抱き締める腕に力を込め、目の前の艶のある黒髪に頬を押し付ける。
「俺…二宮くんのことが…ずっと頭から離れなかった」
汗を掻いたせいか、二宮くんからはシャンプーの残り香がふんわりと香ってきてて。
その香りをすぅっと思い切り吸い込んで、意を決してもう一度口を開いた。