煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
「俺の好きは…」
言いながら二宮くんの肩をそっと抱き寄せて。
ぱちっと一度瞬きをして見開かれた瞳。
そこから、少し開いた薄い唇に視線を落とす。
二宮くん…
俺の好きは…
こうゆう"好き"なんだよ…
顔を傾けながら目を伏せて、ゆっくりとその唇目掛けて近付いた。
ーーー♪♪♪
鼻先が触れようかとしたその時、急に軽快な着信音が響いてびくっと肩を揺らしてしまい。
目の前の二宮くんも同じように反応して、途端に真っ赤に染めた顔で恥ずかしそうに緑の両手で口を覆った。
「あっ、いやっ!ごめん違うの!…って、あれっ?」
二宮くんに必死に言い訳をしつつ、あたふたと体をまさぐって。
鳴り止まない着信音の根源は着ぐるみの中のジャージのポケット。
こんなタイミングで寸止めしちゃって、どちらにせよ二宮くんには申し訳ないことをしてしまってる。
なのに、一人では着ぐるみを脱げなくて手伝って貰ってるこの情けない状況は何なんだ。
きりんを脱ぎ捨て、ようやくスマホを手に取り画面を見れば。
表示されたその名前に一気に心臓が凍りついた。
「…っ、もしも」
『はい、しゅうりょーう。相葉くん、約束破ったね?』
電話の向こうから食い気味に聞こえてきたのは、楽しそうに弾ませた松潤の声。
「っ、いや違うって!これはその、」
『何が違うの。今、完全にしようとしましたよね?』
「っ…」
『ほらこっち、見てみ。後ろ後ろ』
そう言われて振り向けば、渡り廊下の先から耳にスマホを当てて歩いてくる松潤の姿が。
「そんなとこにっ…」
『いや相葉くんが言ったじゃん、コクるから見届けといてって』
確かに松潤にはそう言った。
二宮くんに告白するから見守っててほしい、って。
…でもほんとに今までのことバッチリ見られてたんだ!
「ごめんなさいね、こんなとこに連れ込んで」
俺たちの傍まで歩いてきた松潤は、赤い顔のまま驚く二宮くんに申し訳なさそうに声を掛けて。
「じゃあ相葉くん、約束破っちゃったからもう終わりだね」
「えっ!ちょっ、待っ…」
「そろそろ時間だし。さ、行きましょっか」
言いながら二宮くんにかっぱの頭をスポッと被せた松潤は、困惑したままの二宮くんの腕を取り連れ去っていった。