煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
遠くの方から歓声が湧き上がる度、俺の気持ちはずっしりと重くなっていく。
誰も居ない中庭、校舎の壁に寄り掛かり膝を抱え込んで空を見上げた。
今頃、二宮くんはステージでキラキラの笑顔を振りまいているはず。
本当なら俺も、そんな二宮くんの傍でステージを盛り上げる役目だったのに。
はぁ…と吐いた溜息は、清々しい程きれいな青空に溶けていくようで。
…我慢できなかったなぁ、俺。
だってあんなに可愛い二宮くんを目の前にして、何もするなって方が無理な話じゃん。
今回の学園祭大作戦を実行するにあたって、松潤から口煩く言われていたこと。
"今回は告白だけ。それ以外のことは絶対にするな"
ってあの目力で押し切られたら従うしかないでしょ。
確かに俺もまさか自分があんな行動に出るなんて思ってなかったよ。
だけどさ、二宮くんに俺の気持ち伝わってないかもって思っちゃったんだもん。
だから想いのままに、俺の好きはこうだよって示したかったんだ。
でもまだ唇には触れてなかったから。
…いいところで電話かかってきたし。
また一際高い歓声が遠くで聞こえ、胸の中のもやもやが更に広がっていく。
松潤には二宮くんのことに関して本当に色々助けてもらってるのは確かなんだけど。
そもそも生徒会に入ってる松潤が今回の学園祭のことも提案してくれたし。
イチから全部のシミュレーション考えてくれて、俺の背中を全力で押してくれたと思ってたのに。
…つーかこれって未遂って言うんだよね?
俺ギリギリ約束破ってないよね?
なのにこんな仕打ちってある?
頭を後ろの壁にコツンと預け、凪いで動かない雲を見つめる。
二宮くんは…
俺のことどう思ってるんだろう。
結局俺の気持ちが伝わったのか、すでに伝わってたのかすら分からない。
なんかもう…わかんねぇや。
こんな中途半端に終わっちゃって、どんな顔して二宮くんに会えって言うんだよ。
一気に失せてしまった自信。
おまけに、二宮くんへの想いも頼り無げに揺らめいているみたい。
もう何度目かの溜息を漏らした時、ジャージのポケットから軽快な音がひとつ響いた。