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煩悩ラプソディ

第34章 君の瞳に恋してる/AN






見ると、松潤からLINEのメッセージが。


潤《ステージ終わった。謹慎終了。今すぐ来い》


立て続けに並んだ簡潔なその文章。


とにかく今すぐ来いってことだけど、きっとそこには二宮くんも居るはず。


今までの俺なら全力ダッシュするくらい嬉しいことなのに、沈んだ気持ちのせいか重い体はピクリとも動こうとしなくて。


画面をぼんやり見つめながら、どんな嘘をつこうか考える。


《ごめん今トイレ中!もうちょいかかるわ》

潤《おい何回目だよ。こんな時に快調発揮してんじゃないよ》

《仕方ないじゃん、出るもんは出るんだから》

潤《いいからマジで急いで。二宮くん帰っちゃうぞ》


現れたメッセージを見て、どくんと胸が波打つ。



会いたいけど会いたくない。


会わせる顔がない、会うのが怖い。


さっきまで二宮くんの前であれだけ昂らせていた気持ちは、嘘のようにしぼんでしまっていて。



何て返そうか指を彷徨わせていると、新たに現れた吹き出し。


潤《二宮くんすげー頑張ってたよ。本番前にあんなことがあったのにさ》


その松潤の文章にチクリと胸が痛む。



…そうだよ、あんなワケ分かんないとこに連れてかれてさ。


いきなり好きだなんて言われて、おまけにキスまでされそうになって…


改めて振り返れば、俺はとんでもないことをしでかしたのかもしれない。



そう思うとますます指は動かなくて。


しばらくすると画面にまた新たな吹き出しが現れた。


潤《いいのか?このままで。相葉くんは逃げてるだけじゃねぇの?》

潤《言うだけ言って二宮くんの気持ちは確かめなくていいのかよ》

潤《もしこのことが櫻井にバレたらどうすんの?もう完全に会えなくなんぞ》


既読にだけして返信しない俺に、松潤からの喝が立て続けに入れられる。


その厳しくも俺の心を奮い立たせるような文面に、どくどくと心臓が高鳴っていくのを自覚していた。


そして。


潤《真っ向からぶつかんだろ?いけ!俺が許す!》


追いうちを掛けるように現れたそのメッセージを見て、ようやく重かった体がふっと軽くなった気がして。


勢い良く立ち上がり、画面に指を滑らせる。


《スッキリした!松潤ありがと!今から行く!》


送信してポケットにスマホを放り込むと、賑やかな声のする方へ駆け出した。

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