煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
逸る気持ちに突き動かされるまま、脚が取れてしまうんじゃないかってくらい全力ダッシュをして。
とにかく二宮くんにもう一回会わなきゃ。
そしてちゃんと伝えなきゃ…
俺の"好き"を…!
がむしゃらに走って校舎の角を曲がろうとした時、一瞬何かの影が視界に入って。
それが人だと認識した時にはもう遅くて、急に止まれない体はそのままドンっと衝撃を直に受けた。
「うわっ!!」
「ひゃっ…!」
ドサっという音と地面の砂利の感触。
そしてコロンと転がったキャップが視線の先に映り。
瞬間的に覆い被さって下敷きにしてしまってる体勢だと気付く。
「っ、すみませっ…!」
慌てて体を起こすと、顔の前に交差された両腕がおずおずと下ろされ。
そこに現れたうるうるの瞳に、一瞬で頭が真っ白になった。
っ!
二宮くんっ…!
至近距離で見上げられる瞳は、戸惑いを隠すことなくただゆらゆらと揺れて。
それもそのはず、ぶつかって完全に下敷きにしちゃってるこの状況。
その事実に一気に血の気が引くような感覚に襲われる。
「ごっ、ごめんなさい!大丈夫っ?ケガない…?」
急いで飛び退いてその肩を抱き起こすと、小さく顔を歪めて『大丈夫です…』と溢したけど。
絶対大丈夫じゃないよね!?
大事な二宮くんの体になんてことしてしまったんだ俺はっ…!
つーか真っ向からぶつかるってこうゆう意味じゃねぇだろがっ!
パニックに陥ってる頭の中、抱き起こした腕をふいにぎゅっと掴まれて我に返る。
「…良かった、会えて。
探してたから…相葉さんのこと…」
ぽつり小さく呟いたその表情は一瞬緩まって、目尻からはぽろっと涙が零れ落ちた。
「えっ!あっごめんね、痛かった?だいじょ…」
「大丈夫ですっ…ごめんなさい、」
突然の涙に一層焦ったけど、その前に発せられた二宮くんの言葉が引っ掛かって。
…え、探してたの?俺を…?
「あの…確かめたいことがあるんです」
ぎゅっと腕を掴まれたまま目元を赤く染めた瞳に見つめられ、思わずごくっと息を呑んだ。