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煩悩ラプソディ

第34章 君の瞳に恋してる/AN






何か言わなきゃとしているような二宮くんに居た堪れなくなって、心と同じく重くなってしまっていた口を開いた。


「…そうだよね、」

「でも…」


重なった声に驚いて目を上げれば、二宮くんもこちらに視線を寄越し。


久々に合った瞳に、またきゅっと胸が締め付けられる。


だけどその瞳はすぐに逸らされ、落ち着かなげに彷徨っていて。


きっと、俺を傷付けないように言葉を選ぼうとしてるんだ。


そんな気遣いにも胸を打たれて、こんな状況なのに益々二宮くんを好きになっていく自分が悲しい。


「分かんなくて…」


ふいに、ぽつり続けられた二宮くんの言葉。


「…え?」

「分かんなくて…自分の…気持ちが…」


おずおずと溢されたそれは、二人だけの空間にふわふわと浮かんでいるような。


「だから…確かめたいんです…」


その正体が掴めないまま、続いて発せられた二宮くんの言葉に思考が停止した。


「さっきの続き…
してみてくれませんか…?」


唇をきゅっと噛み締めて、キャップの翳から覗かせたうるうるの瞳に見上げられ。


危うくその顔に見惚れてしまいそうになったけど、慌てて思考を引き戻して。



続き?って…


え?いやまさか…


ウソ…
えぇぇぇっ…!?



その意味を理解した瞬間、驚き過ぎて心臓が止まりかけた。


けれど、固まる俺をよそに二宮くんは俺から視線を逸らさずにいて。


「…だめですか?」

「っ…いやっそんなことっ!」


不安そうな瞳に訴えられて反射的にそう返したけど、未だ頭の中は掻き乱されたようにぐちゃぐちゃで。



待って待って…


ってことはつまり…


キス…



ハッと我に返ると、隣で膝を抱えていた二宮くんは脚を崩して俺の方に向き直っていて。


期待と不安に満ちたような表情で、じっとこちらを見つめてくる。


その姿に思わずごくりと唾を呑み込んだ。


急展開過ぎるこの状況に、口から心臓が飛び出てしまいそうだけど。


ここはもう…


もう俺…
突き進んじゃっていいよね…?

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