煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
ぴったり添えられた首元に伝わる小さな声。
辛うじて呑み込めた唾がごくりと喉を鳴らし、傍らの熱に全神経を集中させる。
「もう…分かりました…」
唇が動くのを首筋に感じ、くぐもった声がぽつり響き。
「俺も…
好きです…相葉さん…」
熱い吐息と共にはっきりと届いたその言葉。
そしてゆっくりと温もりが離れ、至近距離に現れた二宮くんの顔は。
今まで見た中で一番、可愛くて色っぽくて。
「すき…」
艶やかな小さな唇がそう動くと、うるうると赤く染めた瞳がそっと閉じられた。
ちゅ…
ふいに触れた柔らかな感触。
閉じられた睫毛がふるふると揺れているのが視界に入り、瞬時に二宮くんにキスされているんだと自覚する。
う、わっ…
ぎこちなく触れている唇から溢れてくる二宮くんの気持ち。
それが俺のと同じなんだと実感して、また湧き上がってくる昂り。
堪らなくなってぎゅっと抱き締めれば、応えるように鼻先から小さな声が漏れ出て。
そんな二宮くんの仕草に愛おしさが募って仕方がない。
夢なんじゃないか。
まさか本当にこの想いが実る日が来るなんて。
触れているところ全てから生まれてくる熱を、こうして二宮くんと分け合うことが出来るなんて。
ほんの数秒のキスがとてつもなく長く感じられて、幸せを噛み締めるように浸っていた時。
いいムードに割り込まれて響いた軽い着信音。
二人して肩を揺らし、どちらともなく身体を離す。
まるでさっきのデジャヴのような光景に、また慌ててポケットを探っていると。
「ぁ…」
真っ赤な顔のままスマホを見つめている目の前の二宮くん。
「翔さん…」
鳴り響く着信音の中、弱々しく呟かれた声ははっきりと俺の耳に届いた。
…え?ショウさん?
ってもしかして…
「それ…櫻井さん…?」
「えっ?」
俺の問いに顔を上げた二宮くんは、驚いたようにぱちっと瞬きをして。
「なんで知って…」
「ごめん、ちょっと貸してくれる?」
「え?あっ…」
戸惑う二宮くんの返事を聞く前に、手の平のスマホを奪い取り。
こうなったらもう正々堂々と。
…胸を張って言ってやるんだ。
「もしもしっ…相葉です…」