煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
いつものファーストフード店の、いつもの奥の席。
うっすら涙を浮かべ声を殺して笑う松潤を目の前に、俺は完全に不貞腐れていた。
「はー…ダメだ、思い出すだけでもう…」
「おいっ!いつまで笑ってんだよっ!」
目尻を拭いながら肩を揺らす松潤に、さすがの俺も怒りが込み上げてきて。
『ごめんごめん』と繰り返される気の無い謝罪。
そんなニヤニヤ顔を睨みつけ、向かいに沢山残っているポテトを奪って口に放った。
あの学園祭の後、松潤から聞かされた衝撃の事実。
確かにちょっと考えれば分かることだったかもしれないけど、あの時の俺はそんなの考える余裕なんてなかったから。
松潤との打ち合わせ通り、二宮くんへ気持ちを伝えることで精一杯だった俺。
そして伝えた想いは見事に実って、全てが上手くいったって手放しで喜んでいたのに。
それもこれも全部、最初からこうなるように出来ていたなんて。
「や〜…けどまさか櫻井さんに電話するとは思わなかったわ」
やっと落ち着いたのか、はぁっと息を吐いてストローに口を付ける松潤。
「ほんと想定外だった。相葉くんにそんな男気があったなんてさ」
「っ…うるせぇよっ!」
噛み付く俺をよそに、ニヤニヤしたまま呑気にジュースを飲み続ける。
松潤から聞かされた衝撃の事実とは。
実は、松潤と櫻井さんは裏で繋がっていたということ。
と言うのは聞こえが悪いけど、要は俺と二宮くんの恋を二人で実らせようとしてくれていたってことらしくて。
櫻井さんと初めて会った日、冷たく言い放たれた言葉に完全に打ちひしがれた俺。
けれどあの後、松潤は俺に何も言わず櫻井さんに連絡を取っていた。
何か裏があるんじゃないか。
本当のことを教えてくれと。
もちろん最初は相手にされなかったみたいだけど、何度も食い下がってくれた松潤はある条件を呑む代わりに真実を聞き出すことに成功したらしい。
櫻井さんから聞いた真実は。
"和也は相葉さんのことが好き"
"本人は気付いていないが、間違いない"
デビューする前から手塩にかけて育ててきた櫻井さんだから、恋をして雰囲気が変わった二宮くんにはすぐ気付いたみたいで。