煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
櫻井さんとしては二宮くんの恋をサポートしてあげたいという思いはあるけれど、それは今じゃないと。
夢に向かって歩き出したばかりの二宮くんに、マネージャーとしてやるべき事はそれじゃない。
だから心を鬼にして、二宮くんには次々と仕事を与えてきたんだそう。
少しでも俺の事を忘れられるように。
でも、事あるごとに俺からの皺くちゃの手紙を眺める二宮くんを見て、櫻井さんも心が揺らぎ始めて。
実は…学園祭の件は櫻井さんからの逆オファーだったらしい。
仕事と銘打って俺と会える機会を与えてくれたんだ。
たまたま生徒会に入っていた松潤に相談したらトントン拍子に計画が進み。
そんな経緯を知らない俺は、出来レースのような作戦を松潤と一生懸命練って。
櫻井さんが居たら警戒するからって、あの日はわざと別の現場に行ってもらうようにまでして。
そうして完璧に作り上げられた舞台で、俺は完全に踊らされたってワケだ。
「でも良かったじゃん、結果的に」
「…それはそうだけど、」
「ほぼ俺のイメージ通りだったし」
「つーか面白がってたろ絶対」
「そんなことないって」
「笑ってんじゃねぇよっ!」
またもニヤニヤしだしたそのイケメン面が憎たらしい。
今思えば、あれだけ上手くいくって応援してくれた割に寸止めさせられたり。
かと思ったら、背中を押すどころか蹴る勢いの激励メッセージをくれたり。
完全にオモチャにされたな…
でも、俺の為にここまでしてくれた松潤には本当に感謝しかなくて。
やっぱり持つべきものは友なんだなって。
…あ、そういえば。
「ねぇ、」
「ん?」
「櫻井さんからの条件ってさ、結局何だったの?」
ポテトを摘む松潤に問い掛けると、一瞬の間の後『あぁ』と言って口を開いた。
「バイトをね、ちょっと」
「バイト?」
「うん、モデルの」
「っ、モデル!?」
思わず大声でオウム返ししてしまった口を慌てて両手で塞ぐ。
「うるさいよちょっと」
「いやっ、えっモデル!?松潤がっ!?」
「まぁね、つーか…」
そしてテーブルに腕を組み、身を乗り出して一言。
「相葉くんもね、一緒に」
言い終えてニコッと上がった口角とは裏腹に、俺の顔は引きつってしまって。
…はぁぁぁっっ!?