煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
事務所に連れて行かれ、反抗する間も無く流されるままに契約を終えてしまった。
だって、久々に面と向かった櫻井さんと隣に座る松潤からの圧には逆らえるハズもなくて。
初めこそ『騙したみたいで申し訳なかった』って言ってた櫻井さんも、契約の話になると完全に仕事モードになって淡々と説明してくるから。
あぁ俺ほんとにモデルの仕事やるハメになったんだ、ってただ呆然としていた時。
応接室の外からドアの開く音と『おはようございます』と言う声が小さく聞こえて。
瞬時に二宮くんだと気付いて顔を上げれば、立ち上がった櫻井さんが部屋から出て行った。
トクトクと鳴り出す心音を聞きながら、期待を込めてドアを見つめていると。
バタンと勢い良く開いたドア。
そこに現れたのは、いつものチェックシャツにリュックを背負った二宮くんで。
頰を赤くしたうるうるの瞳と目が合って、途端にドクンと心臓が波打った。
「っ、相葉さんっ…!」
言いながら駆けてきたその体を、すんでで立ち上がり受け止める。
ぎゅっとしがみ付く久々の感触に体中が一気に熱を帯びてきて。
「お〜熱いねぇ」
傍で呟く松潤の声にハッとして、慌ててその華奢な肩に触れながら顔を覗き込む。
「にっ、二宮く…」
「相葉さんっ…会いたかった…」
背中に回された腕にぎゅっと力がこもり、消え入りそうな声で漏れたその言葉に。
急激に込み上げるあの日と同じ昂り。
ドクドクと波打つ心臓と火照り出す体。
ちょ、二宮くん…
そんなこと言われたらっ…
「こら和也、」
静かに響いたその声に、腕の中の二宮くんがピクッと肩を揺らし。
目線を上げると、眉をハの字にしてメガネをくいっと上げる櫻井さんが。
そしておずおずと顔を上げた二宮くんもまた、不満そうに眉を下げうるうるの瞳で口を小さく尖らせていて。
その超ド級の破壊力に思わずゴクッと唾を呑み込む。
「…そこに座りなさい」
続いた櫻井さんの言葉にゆっくりと体を離した二宮くんは、俺の腕に触れたままそっとソファに腰を下ろした。
そんな仕草にもキュンとしつつ、同じように隣に腰を下ろす。
「で、これからのことですが…」