煩悩ラプソディ
第34章 君の瞳に恋してる/AN
急に神妙な面持ちで口を開いた櫻井さんに自然と背筋が伸びる。
そんな俺の緊張が伝わったのか、ぴったりとくっついて座る二宮くんも同じように姿勢を正した。
「まず今回…お二人には和也のことで色々とご心労をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」
膝の前で組んでいた両手をぐっと握り直し、語りかけるように紡がれる言葉。
何を言われるのかと少し構えていただけに、突然の謝罪に驚いてしまって。
何も言えないでいると、そのまま静かな口調が続いた。
「私の判断が正しかったのか間違っていたのかは分かりません。
しかし…和也にとっては間違いなくプラスになっていると私は思っています」
二宮くんに視線を遣ったメガネの奥の瞳が、心なしか柔らかく揺れたような気がして。
寄り添った傍からきゅっと拳を握り締める気配がする。
「私の仕事はタレントの力を引き出して十分に発揮させることです。
…手前味噌ですが、今の和也は一番輝いていると確信しています」
そうして強い意志を灯して真っ直ぐに向けられた瞳。
「あなたの…相葉さんのおかげです」
言い終えてふっと緩まった口元に、初めて櫻井さんの笑顔を見て。
ふいにそっと重ねられた柔らかな手。
耳まで赤く染めて俺を見上げる潤んだ瞳と目が合って、トクンと胸が高鳴った。
まさかそんな風に言われるなんて思ってなかった。
勝手に好きになって、ただひたすら近付きたくて。
ブレーキを掛けてもどんどん加速していった想い。
迷惑と片付けられても仕方がなかったこの恋なのに。
なのに、俺のおかげだなんて…
「本当に…ありがとうございます」
「いやっ、そんな…櫻井さんっ、」
深々と下げられた頭にただただ焦っていると、隣でソファに背を預けていた松潤が体を起こし。
「…で、勿論僕たちも輝かせてくれるんですよね?」
ニヤっと笑って挑戦的な視線を送る松潤。
そんな松潤に一度目を丸くした後、またふっと表情を緩ませた櫻井さんは。
「…当たり前でしょう。あなた方のようなダイヤの原石を磨くのは私の得意分野です」
そうしてくいっと口角を上げてこちらを見たメガネの奥の瞳が、自信に満ちてキラリと光って見えた。