煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
そんな大野さんを見て、俺も達成感で満ち溢れた。
俺の中に、大野さんがいる。
こんなの、信じられない。
そう思うと、涙が溢れてきた。
それは、ここまで流した涙とは違うもので。
「ぁ…うれ、し…、」
込み上げてくる想いにたまらなくなって、両手の袖で顔を覆って泣いた。
夢みたいだ。
こんな気持ち…
アナタが、初めてだよ…。
「…っ、にのっ…」
大野さんが上体を倒してギュッと抱きついてきた。
弾みで挿入されている角度が変わり、強い刺激が押し寄せる。
「うぁっ…」
「も…にのっ、にのっ…!」
抱きしめたまま何度も名前を呼んで、腰を沈めてくる。
急な強い刺激にまた意識をもってかれそうになったけど、それを上回る満ち足りた感覚が体中を包み込む。
うわ言のように俺の名前を繰り返して律動する大野さん。
繋がった部分から粘着した音を響かせて、荒い呼吸で俺にしがみついて。
「はぁっ…にのっ、にのっ…」
「んっ…さと、しっ…」
「ぁっ…ん…かずっ、かずっ!」
俺が下の名前で呼ぶと中で塊が少し変化して、それをきっかけに大野さんの腰を送る早さも増してきた。
痛みや苦しみや、快感や、幸福感。
一度に色んな感覚と感情が溢れて、俺の頭と体はもうパンク寸前。
腰を打ちつける音を遠くに聞きながら、目の前の温もりをただ感じていたかった。
「はっ…さと、さとしっ…」
朦朧とする意識の中、両手を必死に首に巻きつけて名前を呼んだ。
「ぅ…大好きっ…もぅ、大好きぃっ…」
「かずっ、ん…大好きだよ、かずっ、」
唇を塞がれて、言葉ごと飲み込まれた。
送られてくる激しい律動が俺の中に刻まれて、その時を迎えようとしている。
上も下も、前も後ろもわからないくらいに。
「はぁっ…あぁっ…かずっ、も…イ、くっ…!」
大野さんの声が鮮明に耳に届いたと思ったら、俺の中に熱いものが注がれた。
ドクドクと脈打つその塊を感じながら、体中に広がって染み渡るような錯覚に陥る。
…あぁ、
なんて…
幸せなんだろ…。
霞む視界に愛しい人の眼差しを確認すると、そのまま脱力して意識を手離した。