煩悩ラプソディ
第36章 愛のしるし/AN
もうじき三年生が引退して初めての公式戦がある。
いわゆる新人戦ってやつで。
俺が入部したての時は、井ノ原先輩や岡田先輩といった屈指の三年生プレイヤーがゴロゴロいた。
そんな中、相葉先輩と櫻井先輩は二年生ながらスタメンで活躍してて。
ただ相葉先輩の背中を追い掛けて入った俺だけど、とんでもないとこに来ちゃったんだなってつくづく思ったのもその頃。
しかもみんなそれぞれの個性を存分に発揮した凄く纏まったチームだったんだ。
って、一年の俺が言うのはおこがましいんだけど。
でも、俺はそんな先輩たちの背中をずっと見てきたから分かる。
この先輩たちがどれだけバスケが好きで、どれだけの時間を費やしてきたか。
それは日々の練習の中でひしひしと伝わってきていたから。
そんな三年生たちが引退した後、思いを引き継ぐのは俺らの役目。
井ノ原先輩に代わって新キャプテンになった相葉先輩は、一段と気合が入っていて。
元々、人当たりも面倒見も良い相葉先輩のカラーはすぐに浸透した。
時には厳しい事も言うけど、その後には必ずフォローをしてくれる。
誰にでも優しくて、誰からも信頼されているうちの新キャプテン。
そんな相葉先輩にみんなついていくのは当然のこと。
でも俺は、ついていくだけじゃ嫌なんだ。
俺だって先輩の役に立ちたい。
まだまだ一年のひよっこだけど、先輩たちの力に少しでもなれたらって。
…そう、相葉先輩と同じコートでプレーするのが俺の目標なんだから。
今日の練習後のミーティングで、新人戦のスタメンが発表される。
実は俺のポジションには二年生の先輩が二人もいて、スタメンどころかユニフォームを貰えるかすらも危うい。
でも、きっと大丈夫。
この日の為にしっかり練習を積んできたんだ。
相葉先輩の力になりたい、相葉先輩に頼られたい。
相葉先輩に必要とされたい、って。
その一心でがむしゃらにボールを追い掛けてきた。
だからどうか…
俺の願いが叶いますように…!
「二宮っ…!」
ふいにそう聞こえたと思ったら、次の瞬間とんでもない衝撃に襲われて。
鈍い音と激しい痛みを感じながら、そのまま目を開けることが出来なかった。