煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
ちょっと聞いてもらおうかな、久々に。
そう思い立ち、履歴の少し下の方にあったアイコンをタップして指を止めた。
…そっか、潤くん今日相葉さんと撮影だ。
もう今頃入ってるかな…
いいや、一応打っとこ。
つらつらとメッセージを打って送信したら、なぜかすぐに既読が付いて。
ん?撮影まだ…
っ、まさか…!
一瞬でこの画面の向こう側が見えたような気がして、続け様にメッセージを打つ。
《お疲れさまでーす。終わったらちょっと聞いてほしいことあるんですけど。うちの相葉さんのことで》
《ねぇ相葉さんになんか見せた?》
潤くんは前にも俺とのLINEを勝手に相葉さんに見せたことがあった。
しかも"優太のこと相葉さんにしか見えない"って俺が言ったのもバラしたって言うし。
完全に前科モンだよあの人。
じっと画面を見つめているとパッと既読が付き。
JUN《見せてはいない》
…いや確実に黒だって。
ちょっと待って、何言ったの!?
一人あわあわしながら潤くんとのトークルームを辿り、それらしき発言をしてないか目を皿のようにして探していると。
シュッと音を立てて下の方に現れたメッセージ。
JUN《俺じゃなくて本人に直接言って。つーか今日相葉くんニノんち行くらしいよ》
「はっ?」
思わず声が漏れてしまい、マネージャーとミラー越しに目が合って。
何でもないよと声を掛けたのも束の間、ポップアップされた新たなメッセージは。
あいば《お疲れさま。終わったら行きます》
いつもの相葉さんらしからぬ少しそっけないそれ。
しかも"行きます"ってなに。
…あのね、たったこれだけの文字で色んなこと考えんの俺は。
もうなんなの。
なんなの急に。
《わかった。待ってる》
そう返せばまたすぐに既読になったけど、撮影に呼ばれたのか返事は返って来なくて。
…来るって何時よ。
つか今からだったら確実に泊まるよね?
今しがた脱いだばかりの"いつもの二宮和也"をまた着なきゃじゃん。
俺…いつになったら相葉さんの前で全部脱げんだろ。
いやほんとは分かってんの、俺次第だってことは。
でもそんなすぐには無理じゃん。
しょうがないでしょうよ。
だって俺たち…
ずっと親友だったんだからさ。