煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
「お疲れー、じゃあね」
「お疲れ、またね」
収録を終えた楽屋で次々に交わされる挨拶。
「にのこれから撮影?」
「うんそう。あなたは?終わり?」
「うん終わり。じゃあ頑張ってね、バイバイにの」
「うん、バイバイ」
満面の笑みで手を振る相葉さんに笑って手を振り返す。
朝からのロケに加えて二本撮りだったってのに、ほんと最後まで元気だなあの人。
まぁそこもいいとこなんだけどね。
潤くんに「にのよろしく」って笑顔で手を振って楽屋を出た後ろ姿を見送り、また手元のスマホに視線を落とした時。
つむじの先に痛いほど視線を感じて目を上げると、じーっとこちらを見る潤くんが居て。
その目を見ただけで言わんとしてることが分かったから、そっと目を逸らして無視を決め込んだ。
なのに。
「なんかいい感じっすね」
ソファの右側が沈むと同時に楽しそうな潤くんの声が届き。
「上手くいってんすか?」
「…ふふっ、なにが」
「なにがってそりゃ二宮さん、ねぇ?」
「くは、なんなのそのキャラ」
スマホから目を上げて隣を見遣れば、案の定ニヤニヤした笑みを向けてきて。
「いやなんかさぁ…不思議だよね」
「ん?」
「こうも変わるんだなって」
「…なにがよ」
ソファに体を預けた潤くんを振り向く。
その顔はまだニヤニヤしてて。
「なんなのよその顔、」
「ふふっ、いやそれはこっちのセリフだっつーの」
肩を揺らして笑いながらそう言うニヤケ顔。
さっきからわざとのように核心に触れてこない潤くん。
なんなのよ…
イジりたいなら一思いにイジれよ!
「あのさぁ…」
背中にぽつりと声が届き、やっと来たかと返事をしようとしたら。
急にガシッと組まれた肩。
驚いて顔を向ければ、射抜くような眼差しでジッと見つめられて。
「自覚ないかもしんないけどさ、そんな顔ずっとしてるといつかリーダーたちにバレるよ?」
一息にそう言い終えてニッと笑ったあと、ポンポンって肩を叩かれたけど。
え、なに?
そんな顔ってなに?
「みんなどんな顔すんのかな。翔くんとか固まりそう。石みたいになりそう」
いや一人で楽しそうに笑ってるけどさ。
え、待ってよ。
俺どんな顔してんの?