煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
撮影の合間もひたすらニヤニヤしてた潤くん。
捕まらないようにダッシュで楽屋を出てマネージャーの車に乗り込んで。
暗い車内に浮かぶブルーライトの画面に指を滑らせた。
あいば《にのーお疲れさま!終わったらウチ来れる?》
《今終わった。なんかいるものある?》
「ねぇごめん、今日相葉さんちで」
「はい、わかりました。最近多いですね」
「ん?あぁ…ゲームをさ、教えてやってんの」
「そうなんですか。仲良くていいですね」
スマホに視線を落としつつ準備していた答えを返して。
最近は相葉さんちに帰ることも増えたから怪しまれないようにと考えた答え。
相葉さんにも同じように言ってるから、俺んちに帰る時は多分そう答えてるはず。
あいば《お疲れにの!なにもいらないから早くおいで》
現れたそのメッセージに口元が緩みそうになって、慌てて袖で口を覆った。
さっき潤くんから言われた"そんな顔"が気になってしょうがなくて。
そりゃ相葉さんと二人の時はちょっと気が緩んでるの自覚してるけどさ。
みんなと居る時はいつも通り振る舞えてると思ってたのに。
俺そんなにだらしない顔してんの?
つーかさ、そんなこと言ったら相葉さんだって。
俺のこと見る目からビーム出てんじゃないかって思うくらいよ?
収録中も相葉さんのほう見たら大体目が合うし。
そんなずっと見てたらほんといつか気付かれんじゃないかな。
俺は気を付けてるけどアイツはそういうの下手くそだからさ。
潤くんも俺に言う前に相葉さんに言えよって話。
ちょっと今日説教してやろ。
お前気を付けろよって。
車窓の景色が間もなく目的地へ着くことを予想させる。
それと同時に多少のソワソワ感が襲い始め。
その原因は…
最近やたらと相葉さんのスキンシップが多くなったからで。
確かに俺たちは恋人って関係だからおかしくなんてないんだけどさ。
正直言うとやっぱりまだ恥ずかしい。
こんなおっさん同士で何言ってんだって感じだけど。
違うの、あの人がバカみたいにストレート過ぎるのがいけないの。
俺の反応が普通なんだよ、きっと。
車がゆっくりと駐車場に入る気配がして、一層ソワソワ感が増した。