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煩悩ラプソディ

第37章 刻みだした愛の秒針/AN






真っ直ぐ見つめられ告げられたその言葉。


表情もこないだ雑誌で見たキメてるそれ。


たっぷり五秒。


『なぁんてね、うそー!』って言うのを待ってたけど、そんな気配は微塵も無くて。


後ろから小さく聞こえるテレビの音とか、火にかかっている鍋のお湯の音とか。


そんなどうでもいいことに思考が縋りたがってる。



…は?なに?


エッチ?



「シよう、エッチ。にのとシたい」


また届いた声に我に返り、思わず目を合わせてしまったのがいけなかった。


っ…!


こんなにド真面目な整った顔にそんなこと言われたら…


自覚するくらい熱くなった顔と体で、俺はなんて言ったらいいの?



「…いいよね?にのは?どうなの?」


黒目がちな丸い瞳で窺ってくる表情。


真っ直ぐに求められてもそれを受け止められずに泳いでしまう瞳。



ちょっと待ってよ…


急にそんなこと言われても…



「にのも同じなら…おいで」


『ほら』とそっと手を広げた相葉さん。


見上げるその顔はムカつくくらい優しくて。



…ずりぃって、もう。


こんなの…


選択肢なんか最初からないんじゃん。



はぁと小さく息を吐き目の前の首元に顔を寄せた。


そのまま腕をそっと腰に回せば、迎えるように抱き締められて。


ぎゅうっと纏わる相葉さんの腕と胸元に、性懲りもなく胸がドクドクと高鳴る。



「ふふっ…良かった」


耳を擽る笑い声は心底安心したような声色。


この人も一か八かだったのかもしんないけどさ。


絶対分かってるもん、俺の答え。


つーかそうなるように誘導したとしか思えないし。


それにまんまと嵌まった俺も俺だけど。


…って、この期に及んで我ながら素直じゃねぇな。



すっと体が離れる気配に腕を緩めると、今度は頬を両手で包まれて。


「…初夜だね、今日」

「っ…、な…」

「くふふっ」


笑いながらちゅっと短くキスをされ『風呂行っといで』と背中を押された。


邪魔したのはお前だろって内心思いつつ、服を脱ぎ捨てながら段々実感が湧いてくる。


目線を落とし何の面白味もない体を眺めて。



スキンシップが増え始めてからは遅かれ早かれいつか来るんだろうなって思ってたけど。


まさか今日だとは。


つか…


俺、どっち?

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