煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
きょとん顔できっぱり言い切った相葉さんに全力で反抗する。
「なんで決めてんだよ!勝手に決めんなよ!」
「いや勝手にってそんなの誰がどう見てもそうじゃん!」
「はぁ?誰が言ったんだよそんなの!」
「言ってないけどそうじゃん!お前そうじゃん!」
指を差されそう言われて、立ち上がって反論しようとしたのに制されたみたいになって。
…いやさ、別に俺は何が何でも上がいいとかじゃないのよ。
なんで俺の意見も無しに既に決まっちゃってんのって。
それになに?
"誰がどう見ても俺が下"みたいな言い方。
それ完全に体格差だけで言ってんだろ。
「…もういい、分かった。俺がそっちなのね」
「……」
「いいよそれで。相葉さんが言うんならそれでいい」
いいの。
別にいいんだよ、結局そうなんだもん。
相葉さんがそうしたいなら俺はそうするし。
「…にのごめん。俺、勝手に決めちゃってた」
「…もういいって」
「ごめんね、にの」
そう言って隣に座り肩をぎゅっと引き寄せられ。
頭をこつんと付けられながら突然の密着にどくんと心臓が波打つ。
「ごめん俺…にのはもうそっちしか頭になかった」
「……」
「勝手だよね…いやだってさ、想像してもそっちしかないんだもん」
「…いいってもう」
「にのが上とか全然想像できな、」
「やめろって!」
これ以上聞いてられなくて相葉さんから離れれば、ゆるゆると口角が上がっていくのが目に入って。
「ごめんね、にの」
満面の笑みで謝りながら唇を寄せてきたから。
「っ、やめろや!」
またまんまと嵌められた感が否めず、体を捩ってせめてもの抵抗をする。
「にーの、ごめーんね」
「くはっ、やめっ…離せっ!」
二人して笑いながらソファにごろんと転がり、尚もジタバタと腕を動かしていると。
急に動きがピタッと止み、相葉さんの顔が真上で翳っていて。
開けていた口を閉じるのも忘れて、見下ろされる瞳に捕らわれ続け。
下って…こんな気分なんだ。
うわやばい…
緊張するかも…
「…だめだ、抑えらんなくなりそう」
張り詰めていた糸を断ち切るように、ふぅと息を吐いて起き上がった相葉さんは。
今まで一度も見たことのない色の瞳をしていた。