煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
固まって動けなくなってしまってた俺の手を引いてくれた相葉さん。
ベッドの傍で急に抱き締められてされるがままだけど。
俺の心中を知ってか知らずか、ただぎゅうぎゅうに抱き締めてくるこの体から。
"大丈夫だよ"って伝わってくるのは何でかな。
体だけじゃなくて俺の心まで包み込んでくれているような。
なんて、こんなこと普段なら恥ずかしくて思いもしないのに。
今日はとことんこの人に頼りたくてしょうがないんだ。
背中に腕を回してぎゅっとしがみつき、首元におでこを擦り寄せて。
もう心も体も全部預けてしまいたい。
預けるから…俺の全部。
「ねぇ相葉くん…」
しがみついたまま小さく呼べば『ん?』って穏やかな声が耳に届いて。
「正直言っていい…?」
「…うん?」
きゅっと腕に力が込められて後頭部をゆっくり撫でられる。
そんな何気ない仕草にも胸が詰まりそうになるけど、この手の温かさに後押しされるがままに。
「俺ね…
怖いのよ、すごく」
「……うん」
「どうなるかも分かんないし…どうやるかも分かんないし…」
「…そうだね」
ぽつりぽつりと繋げる間も、ずっと大きな手で頭を撫で続けてくれて。
この人の声や体から滲み出てくるオーラは一体何なんだろう。
しかもそれが泣きたくなるくらいの安心感。
「もう…任せるから、相葉くんに」
「…うん、大丈夫」
「…大丈夫?」
「うん、大丈夫だから」
顔を上げると思っていた以上に優しい顔をしていて。
「大丈夫、任せて」
「…さっきからそれしか言ってないじゃん」
「大丈夫だって!もう…」
至近距離で不意打ちのキス。
頰を包まれて上向かされたまま深く口付けられて。
相葉さんと恋人になってから知った、キスを受けるという感覚。
上から降ってくる唇が意外にも心地良いものだと教えてくれたのはこの人。
「んっ…」
角度を変えて何度もキスをされながら、抱き寄せられた体はベッドのへりに追い詰められて。
反射的に尻もちをつく格好になったと思ったらそのままベッドに押し倒され。
「はぁっ……にの…」
真上から見下ろされる熱っぽい相葉さんの表情にただ捕われて、その瞳から視線を外すことが出来なかった。