煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
冗談じゃねぇ。
今更止められてたまるかよ。
俺なら大丈夫だから。
今だけはその優しさどっかに置いてこいよ。
ここまで来たんだから…
つべこべ言ってないで連れてってよ。
…進もうよ、俺たち。
「ねぇ今どのくらいなの?」
「えっ」
「入りそうなの?それ…」
「っ、えっと…」
自分のに目線を落としていた相葉さんに問い掛けると、ハッとして俺の脚元に回り込み。
「んー…あとちょっとかな…」
股の間から神妙な顔でこちらを覗いてくる景色に何だか笑いが込み上げそうになる。
なんなのこれ。
出産じゃねぇんだから。
そんな俺も恥ずかしさなんてどこかに行ってしまったみたい。
相葉さんの前で股広げて全部晒け出しちゃってるんだから。
なんだ、もう怖いもんなんてないじゃん。
「ねぇもう…やってみよ?」
「えっ?」
「やってみようって、ね」
上体を起こして相葉さんに向き合う。
心なしか戸惑ったように俺に向けられる眼差し。
ふと右手を見れば手の平にべっとり纏わりついたローション。
シーツにも点々と零れていて、余程大量に使ったんだと分かった。
そんなに慎重になんなくたって…
でもそれがこの人らしいかなんて、こんな時までそんな優しさに触れて胸がきゅんとする。
ほんとにこの人は…
四つ這いで相葉さんの元へ擦り寄って。
あぐらの体勢の膝に乗っかりぎゅっと抱き着いてみた。
「えっ…!」
途端に驚いた声を上げたけど、そんなの無視無視。
首に腕を回してぎゅっと抱き締めれば、少し目線が高くなった頬に艶のある黒髪が触れて。
相葉さんの素肌の感触、匂い、体温。
ぴったり密着したすべての場所からそれらが伝わってひどく安心する。
首元に擦り寄ってはぁっと息を溢すと、ぴくっと揺れた肩。
それと同時に触れ合った互いの昂り。
「…ね、触ろっか」
耳元で小さく囁いてそっと顔を離し。
焦点の合った黒目がちな瞳はゾクッとする程に色気を帯びていて。
その瞳を見つめながら左手をそっと下に伸ばした。