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煩悩ラプソディ

第37章 刻みだした愛の秒針/AN






隙間なく合わさった互いの体。


そして唇も塞がれて、もう今の俺の全てはこの人の為にあるとしか思えない。


俺の中に相葉くんがいる…


本当にこんな日がくるなんて…


言い知れない想いは既にコントロールなんか出来ていなくて。


次々に込み上げてくる涙に自分でも驚くほど。


最早なんの涙かも分からないけど。


こんなに苦しくて痛くて。


気が遠くなりそうなくらいの圧迫感に襲われたのに。


今こんなにも満たされてる。


触れ合った全ての場所から、初めて繋がったその場所から。


相葉さんの全部がゆっくりと俺に注ぎ込まれているみたいで。



「んっ…ふっ、あいばくんっ…」

「はぁっ…ん、にの…」


頬を包む親指が零れる涙を優しく拭ってくれる。


ちゅ、ちゅ…と顔中に唇を寄せられながらうっすらと目を開ければ。


目の前には、目尻に皺を湛えて黒い瞳を細める相葉さんの顔。


そんな愛おしそうな瞳で見つめられたらもう…



「っ…!」

「…ぁ」


思わず無意識にきゅっと力を入れてしまった瞬間、頬を撫ぜていた手がぴくっと揺れて。


不思議な感覚は拭えないけど、きっと俺の中で相葉さんは相当我慢しているに違いない。


そう思ったらどうしようもなく愛おしさが込み上げてくる。


「ね…」

「…ん?」

「いいよ…動いてみて…?」


至近距離で見上げる顔は、さっきの穏やかさが抜けて明らかに切羽詰まってて。


「いいの?まだ止まってないよ…?」

「んん、違うの…痛いんじゃない」


涙の跡をまたくいっと拭いながら問い掛けられ、今日何度目かのこの人の優しさに胸が熱くなる。



…いいよ、相葉くん。


俺の全部…


早く相葉くんのものにして…



ゆるりと両腕を首に巻き付け下からその瞳を見つめた。


多分俺の顔ぐちゃぐちゃだろうけど。


もうそんなことどうだっていい。


この人になら、俺の全部を晒け出せる。



「じゃあ…いい?」


余裕のない顔でぽつりと声が届き、返事をする前に再び両膝を抱えられ。


すっかり根元まで受け入れたそこにさっきとは違う違和感が訪れて。


「ふぁっ…」


排出される感覚が何とも言えず漏れてしまった声。


それを呑み込む間もなく、ゆるゆると動き出した心地に声を抑えられない。

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