煩悩ラプソディ
第37章 刻みだした愛の秒針/AN
いつものレギュラー番組の楽屋で。
いつも通りソファでスマホゲームに耽っていたら、急に隣が沈んで横顔に痛い程の視線を感じた。
そろりと横目を遣れば、あからさまにニヤニヤした潤くんが俺の顔を覗き込んでいて。
「…なによ」
「ふふっ…え?いやぁ…」
ゆったりと背凭れに体を預けながら『べつに~?』なんて言ってるけど。
相葉さんと初めてを迎えた日の翌日、潤くんとの仕事が入っていた相葉さんは。
何を血迷ったか潤くんにそのことを報告したらしく。
相葉さんからその事後報告を受けてちょっとした小競り合いになったものの。
『なんで?松潤には言わなきゃダメじゃん。
にのだって相当お世話になったんだから』
って澱みの無い瞳で言い包められてしまい。
まぁ確かにそうっちゃそうだけどさ。
そういう生々しいことはいくらなんでもさ…
「まぁさ、良かったじゃん」
「……ねぇ」
「ん?なに?」
「いい加減そのネタ引っ張るの止めてもらえます?」
それにつけ込むように潤くんのニヤニヤ攻撃も止むことはなく。
「え?ニノが全身筋肉痛になったって話?」
「おい!言うんじゃないそれは!」
「くくくっ、真っ赤、耳」
「っさい!」
ケタケタと笑いながら耳を触ろうとする潤くんの手を払い除けた時、楽屋の向こうから聞き慣れた声がした。
「はよーっす」
いつもより少し下がり気味に感じた声色を捉えたと同時に、目線の下で滑り込むように部屋に入ってきた影が。
そう思ったのも束の間、猛ダッシュで突進してきたそのかたまりを慌てて抱き留めた。
「っ、えっ…!?」
「にのちゃぁん!きたよー!」
胸の中でぐりぐりと顔を埋める小動物は紛れもなく優太で。
周りのメンバーも『久し振りだなー』なんて言いながらソファに近寄って来るけど、突然のこの状況と衝撃に一瞬パニックに陥ってしまい。
見上げれば、申し訳なさそうに笑いながらこちらに歩いてくる相葉さん。
「ごめん、また捕まっちゃった…」
「ふは、相葉くんとこのお従姉さんマジ強者だよね」
「もうさぁ…無理だって言ってんだけどねぇ…」
「ま、いんじゃない?優太だってもう慣れちゃってるし」
苦笑しながら労う翔ちゃんと宥めるように優太の頭を撫でる潤くん。