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煩悩ラプソディ

第37章 刻みだした愛の秒針/AN






みんな何だかんだ言って相葉さんには優しいんだ。


未だニコニコしながらぎゅうっとしがみついている目下の優太を見遣る。


やっぱ相葉さんにそっくりだな。


こうやって近くで見るとほんとに似てる。


ずっと優太のこと相葉さんみたいに思ってたけど今はなんていうか…


いつもは逆なのに俺の方が相葉さんをぎゅってしてるような感覚がして。


…うわ、今きゅんってした俺。


自分の中に芽生えた新しい感覚にちょっと戸惑う。


こういう愛おしさもあるんだなって。


すっかり胸の中の優太に絆された気分でいると、いつの間にか隣に相葉さんが座ってて。


振り向けば、じいっと俺を見つめる黒目がちな瞳とぶつかる。


「…あのさ」

「…はい?」

「俺はこっちだからね」


と自分を指差してずいっと顔を近付けてきた相葉さんに、完全に頭の中を読まれた気がして急に恥ずかしさに襲われて。


「な、何言ってんの…」

「あ、ほら図星!今なに考えて、」

「あれぇ?」


ぐっと体を寄せてきた気配にドキリとした瞬間、胸元の優太が急に素っ頓狂な声を上げた。


その余りの声の大きさに楽屋に居た全員の視線がソファに注がれる。


そして次に優太が発したセリフに、確実に時が止まってしまった。


「なんかにのちゃんとまぁくんおんなじにおいするー」


『なんでー?』と屈託なく問い掛けてくる優太。


一瞬の間のあとゲラゲラと笑い出した潤くん。


『なになに?』ってまた近付いてくるおじさんチームに。


隣の相葉さんは…


しまった!って顔で俺を見てきて。


その余りの歪みように思わず吹き出してしまった。



あぁ…そっか。


どうせこの先もこんな予想外の出来事が起こるんだろうな、あなたと居ると。


でも…それもいいかなんて。


そんな人生も楽しそうだなんて思ってしまってんだ。


あなたに全てを預けたその日から…



「なんでー?ねぇまぁくんなんでー?」

「えっ!いやっ、それはっ…」

「なに?どしたの?」

「あはは!もう言っちゃえば?相葉くん」

「えぇっ、今っ!?ちょ、にの!」



今までとは同じようで違う時間を歩き始めてる。



もう…進み始めてんだから、俺たちは。



ね、そうでしょ?



…相葉くん。






end

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