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煩悩ラプソディ

第38章 ハートはメトロノーム/SM






「よぉ、松潤」


事務所の階段で遭遇してしまったあの日から、ことあるごとに大野から絡まれることが増えた。


しかも勝手に相葉くんみたいに呼びやがって。


「…なんすか」

「ふふっ、そんな嫌な顔すんなって」


肩をぽんと叩かれるけど心地の悪さにすぐ振り払う。


そんな仕草にも全く動じず、ふぁ~と欠伸を一つかましロビーのソファに腰を下ろした。


今日は、年に一度事務所の人間が一堂に会して交流するイベントの日。


そして今年入所した新人タレントをお披露目する日でもある。


俺と相葉くんは昨年入所だけど、今回が初めての交流会になるからそのメンバーに入っていて。


そしてもちろんこの大野もなんだけど。


相変わらず髪おっ立てて眠そうにぼーっと座る姿。


…つーか大体コイツ何者?


二宮くんと同じアーティスト部門って言ってたけどボーカルなの?


こんなガラ悪いヤツぜってー売れねぇだろ。


さすがの翔さんでもコイツはどうにも出来ないんじゃ…



「あ」


眉を顰めて大野を窺っていると、急に声を上げて俺の方を振り向いた。


突然目が合って不覚にもビクッと肩を揺らしてしまい。


「…思い出したわ」


そう言ってヘラッと笑い、ちょいちょいと指で呼ばれて。


「…なに」

「いいから来いって。ここ座れ」


大野の隣を示されるけど、ここは沢山の人が行き交うホテルのロビー。


正直こんなガラの悪いヤツの連れだと思われたくない。


だからある程度距離を取って立ってたのに。



「何してんだよ、座れって」


なかなか動き出そうとしない俺に大野もさすがに痺れを切らしたのか、立ち上がりぐいっと腕を掴んできて。


半ば強制的に大野の隣に座らされるハメになってしまった。


「ふふっ、いい情報あるぜあんちゃん」



ってそんな言い方すんなよ、なんかリアルだから。


つーか肩組んできてんじゃねぇ!



ぐっと引き寄せられて近くなった距離に益々眉を歪めれば、そんな俺を覗き込みながら大野が口を開く。


「あんな、櫻井さん彼女いねぇぞ」

「…っ!?」

「ここ何年もいねぇって」

「……な、」

「あと趣味はスポーツ観戦。あ、全くの観る専門な。んで高校ん時は放送部、大学では落語研究会で、」

「…ちょ、ちょっと待って!」

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