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煩悩ラプソディ

第38章 ハートはメトロノーム/SM






そんな、恋愛のことに関しては一目置いている存在の相葉くんが窮地に立たされる事件が起きた。


いや…正確には相葉くんだけじゃなくて俺も。



モデルとしての仕事が絶えず、学校も早退しがちになっていたある日。


二宮くんから『相葉くんと一緒に来て』と呼び出され、理由も分からないまま揃って事務所へ向かった。


たまに三人で会う時はファミレスとかファーストフードが多いのに。


なんで今日はわざわざ事務所なんだろう。


外では話しにくいことなんだろうか。


「…ねぇ相葉くんさ、なんか心当たりあんじゃないの?」

「なにが?」

「二宮くんから呼び出される理由」

「えっそんなのないって!俺がなんかしたってこと?」


階段を昇りながら横顔を窺うけど、空を仰いでう~んと考えるだけで何も思い当たる節はない様子。


「あ、もしかしてサプライズかも!」

「なんの?」

「ほら、ついにアルバムが出ます!とかさ」

「あ~…なるほどね」

「だから事務所なんじゃないの?極秘情報だもん」


なんて、当たってるかも分からないのに随分とご機嫌に階段を駆け上がる相葉くん。


「ね、一応びっくりしたフリしようね」

「ふふっ、そうかどうか分かんないじゃん」


つられて笑いながら駆け上がり、先にドアを開けた相葉くんの背中を追って中に入ると。


急に立ち止った背中にどんとぶつかって。


「って!なに…」


眉を顰めながら肩越しに目を遣った先に、思いもよらない光景が広がっていた。


二宮くんが大野くんに抱き締められていて。


よく見ると小さく肩が震えている二宮くんの背中を、ぽんぽんと撫でつける大野くんの手。


「お、遅かったな」


そしてこの意味不明な状況に拍車を掛けるまったりした声。



…え、なにこれ?



「お前っ…何してんだよっ!」


固まったのは一瞬だけで、すかさず相葉くんが二人に駆け寄って大野くんの肩をぐいっと押す。


「なにかずに触ってんだよ!離れろ!」

「うぉい!ちょ、待てって」

「離れろってば!かずも何してんの!」


よろけながらもその細い腕を離そうとしない大野くんと、なぜか頑なに預けた胸から顔を上げようとしない二宮くん。

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