煩悩ラプソディ
第38章 ハートはメトロノーム/SM
なんでそうなるんだよっ!
急に怒りの矛先を向けられてしまい、たちまち汗が滲み出てきた。
「そうなんでしょ?このどっちかの子がまーくんのこと好きで。潤くんもどっちかの子が好きだからWデートみたいなこと仕組んだんじゃないの?」
「いやいやちょっと待って、」
「じゃなきゃなんなの?なんでこんっなに楽しそうなの?ねぇなんで?」
「ちょっとかずっ…」
どんどんヒートアップしていく二宮くんは、相葉くんの制止も聞かずにじりじりと俺に詰め寄ってきている。
俺がこの子らを好きなわけがない。
俺が好きなのは翔さんなんだから。
…って二人にはなんにも言ってなかったわ!
このことを知ってるのは…
ふと、傍らで笑いを堪えるように口元を押さえる大野くんと目が合い。
その顔が一段とニヤニヤしだして腹が立ってしょうがない。
「…ねぇ松潤ほんとはそうだったの?」
「は?だから違うって!」
「じゃあなんなの?なんでそんな嘘つくの?」
「嘘じゃねぇし!」
まさに四面楚歌。
この状況はマズ過ぎる。
はっきり理由を言ったところで、俺がめんどくさがってちゃんと後輩に断らなかったのが悪いんだって責められるのは目に見えてる。
でもこのまま後輩のことを好きだと思われてるのも癪に障る。
つーかありえねぇし。
「あのよぉ、」
ふいに大野くんがまったりと口を開いたその顔が、まだニヤニヤしたままで一気に嫌な予感が過ぎり。
そしてその予感は的中した。
「松潤な、そいつらのこと何とも思っちゃいねぇぞ」
テーブルに浅く腰を掛け、顎で二宮くんの手元の紙を指し示す。
「だって他に好きなヤツいるもんな?」
「っ…!」
「えっ、そうなの?」
弾かれたようにこちらを向いた二人。
「なぁ?松潤」
「ちょっ…」
「マジで?俺知らなかったんだけど!」
「潤くんほんとなの?」
腕を組みヘラヘラして投げかける大野くんに乗っかって二人が食いついてきて。
「この際言っちゃえよ、いつまでも隠しとく必要ねぇだろ」
「えっなに?俺らの知ってる人?」
「うそっ!誰誰っ?」
更に、さっきまで怒ってたはずの二宮くんは相葉くんに腕を絡ませて瞳をキラキラさせている。