煩悩ラプソディ
第39章 My name is Love/AN
あれから数日が経った。
相変わらずコイツは俺の家に入り浸っている。
コイツについて分かったことと言えば。
人間の姿をしているけど根底は植物、サボテンだということ。
だから人間のように口から栄養を摂ることはないらしい。
すべてあのサボテンから。
とりあえずサボテンに水をあげてればいいんだそうで。
こんな一人前の男と一緒に居るとなると、食費もバカにならないんじゃって思ってたけど。
その必要はないみたい。
分かったことと言えばほんとにそれくらいで。
分からないことの方が断然多い。
いや、理解できないことっていうか。
コイツには名前もなければ年齢なんてものもない。
そして俺のところに来た理由もまだイマイチ掴めてなくて。
"愛を教えてあげる"って。
それどういうこと?
まるで俺が愛を知らないみたいに言いやがって。
つーか"あげる"ってその上から目線何なんだよって話だし。
隣を歩くコイツを見上げる。
きれいに通った鼻筋と黒く艶のある短髪。
そこそこ男前なのも腹が立つ。
サボテンのくせに。
あんな丸っこいくせに。
「…ねぇ、今日は授業早く終わるの?」
「んー?あぁまぁ…なんで?」
「いや、君の大学に一度行ってみたいなと思って」
「は?なんで?」
怪訝な顔で見上げれば、ふふっと鼻で笑って続けた。
「君がどんなところで生活してるのか見てみたくて」
「……だめ」
「え、なんで?」
「なんとなく」
ほんとになんとなく嫌だ。
つーかこんな知らない奴連れてんの友達に見られたら…
…って、俺もう友達いねーじゃん。
「えー、君のこともっと知りたいのに」
「…つーかさ、その"君"ってのやめない?」
「え、じゃあ何て呼んだらいい?」
「別に何でもいいけど…」
そんなの適当に下の名前でも何でもいいじゃん。
「んーじゃあ…"にの"にしよっかな」
「えっ?」
「え、だめ?二宮だから"にの"でいいよね?」
「あぁ、まぁいいけど…」
にのってあんまり呼ばれたことないな。
今まで下の名前ばっかりだったし。
「じゃあ僕も何かつけてよ」
「え」
「にのがつけて、僕の名前」
「えー…」
めんどくせぇなぁ…
じゃあアレでいっか。