煩悩ラプソディ
第39章 My name is Love/AN
「おい!お前何やってんだよ!」
授業を終えバイトに向かおうとしたら正門の近くに見知った姿を見つけ。
しかも数人の女の子に囲まれてる状況に慌てて駆け寄った。
「あ、にの」
「お前来んなって言っただろ!」
「くふふ、来ちゃった」
笑いながら俺に手を振る間も周りの女の子はキラキラした瞳で見つめている。
「ねぇ私たち今からお茶するんだけどさ、マサキくんも来ない?」
「あ~ごめん、僕これから予定あるんだよね」
「え~ざんね~ん」
こんな可愛い女の子たちに誘われたことなんて俺はただの一度もない。
勝手に大学まで来て俺よりモテて…
くっそ、いちいち腹立つっ…!
「じゃあ行こっか、にの」
「っ、知るか!勝手に帰れ!」
輪の中から俺に向けられた言葉に女の子たちの視線が集まって。
その"空気読んでよ"みたいな雰囲気に耐えられず、アイツを無視して正門をくぐった。
すぐに追い掛けてきて隣に並んだけどスタスタと足を速める。
「ねぇなんでそんなに怒ってんの?」
「は?なんでって?勝手に大学に来たからに決まってんだろうが」
「そんなに嫌?別にいいじゃん減るもんじゃないし」
「うるさい口答えすんな、サボテンの分際で」
「……」
黙ってしまった隣に眉が動く。
…なんだよ、なんか言えよ。
「…あとベラベラ名前とか教えんな」
「なんで?だめなの?」
「…あのね、普通は街で初めて会った人に名前なんか簡単に教えないの」
「だってさ、にのがせっかく"マサキ"ってつけてくれたのが嬉しかったから」
そう言って目尻に皺を刻んで微笑む。
別に特別考えた訳でもないのに。
ただ単に、好きな漫画の主人公がマサキだったから。
それだけのことなのにこんなに喜ばれるとなんか逆に申し訳ないっつーか…
「僕気に入ってんだ、マサキって。ありがとう、にの」
「いや別にそこまで言ってくれなくても…」
ストレートにそう言われてむず痒くなる。
マサキは基本的に表現がストレートだから。
こういう感謝とか面と向かって言われると本当に恥ずかしくて。
いつしかさっきまでのイライラはどこかに消え去っていた。