煩悩ラプソディ
第39章 My name is Love/AN
ガヤガヤとした学食内。
大きなガラス窓の傍の一番後ろの席が俺の特等席。
いつもは一人で黙々と掻きこむだけの食事は、言ってみれば作業の一つ。
でもこうして向かいに人が座ってるというだけで、何となく食事っぽくなってる様な気がする。
いや文字通りほんとに座ってるだけなんだけど。
ニコニコしながらテーブルに両腕を組み、俺が食べてる様子をただただ眺めているマサキ。
これ端から見たらどう映ってんだろ。
「…ねぇ、すげー食いにくいんだけど」
「えっ」
「えっ、じゃねぇよ。そんなに見られてたら落ち着かないって」
「あ、ごめん。でも僕ヒマだし」
「じゃあどっか行っとけよ」
「だめだよ。にのの傍に居なきゃ」
咎めてもきょとんとした顔ですんなり言ってのける。
ここ最近新たに分かったこと。
コイツに色々と言ったところでイマイチ響かない。
言葉は理解しているはずなのに、いくら強めに言ったってへこたれないっつーか。
むしろ何もかも分かり切ってるみたいに受け流すっつーか。
そういう余裕とか器の広い感じもなんか腹が立つ。
…ってさ、俺まるでガキみたいじゃん。
響かないなら諦めて折れればいいのに。
いつまでも自分を貫き通そうとする。
そして結局いつも同じ答えに行き着くんだよ。
"俺はまだ変われてない"
そんな自分が嫌いだって、俺自身が一番分かってるはずなのに。
はぁと溜息を吐けば"どうしたの?"なんて心配そうに窺ってくる。
お前のせいだよって思いながら上げた目線の先、マサキの肩越しに目が留まった。
数人の友人と楽しそうに笑い合ってトレイを運ぶ姿。
あの日以来、潤くんからの連絡はずっと無視していた。
もう関わりたくないって勝手に切り捨てて。
今更俺に何の用があるんだって。
「…あれ?もう食べないの?」
「ん…もういいや」
ガタっと立ち上がってトレイを持った時、同じタイミングで横から声を掛けられ。
「よっ、和也じゃん。久し振り」
"一緒にいい?"って微笑んでマサキにもそう訊ねたその人物は、高校の同級生の翔ちゃんだった。