煩悩ラプソディ
第41章 積み重なる真夏のsuccess/SM
途中のコンビニで適当に酒やつまみを買い込んで。
けど実際こんなのにはほとんど意識はいってなくて。
考えることといったら部屋どうなってたっけってことと、風呂場きれいにしてたっけってこと。
「ごめんマジで引くぐらい散らかってるけど」
「いえ、おじゃましまーす」
ワンルームの狭い部屋。
廊下と呼べるようなものはなくて、すぐに広がったごちゃごちゃした部屋が蛍光灯の下に晒される。
今朝脱ぎ捨てたスウェットを足先で避けながら、ローテーブルと二人分座れるスペースを準備し。
「ごめん、その辺に適当に座ってて!」
「あ、はい」
通路にむき出しの冷蔵庫にビールを入れ、両手に2本持ち足で扉を閉めてテーブルに向かう。
コトッとテーブルにビールを置いてつまみを入れる皿を取りに行こうとすると。
ふふっと溢れた僅かな笑み。
その声の元へ目を遣れば、大きな二つの瞳がこちらを見上げて笑っていて。
「…なんか櫻井さんって面白いですね」
「えっ?」
そしてぐるりと部屋を見渡して。
「まさに大学生男子の部屋です、って感じだし」
「…うんまぁ、散らかってるし…」
「…ふふ。なんか親近感湧きます」
体育座りでゆらゆらと前後に揺れつつそんなことを言い放つ松本くん。
その仕草は狙っているのか無自覚なのか。
はたまた酔いが回ってちょっとテンションが上がってんのか。
いずれにしてもめちゃくちゃ可愛くて、また心臓を撃ち抜かれてしまった。
いかん…
マジでドストライク過ぎる…
顔も仕草も声も、きっと体も…
未だゆらゆら揺れながらキョロキョロ部屋を見渡す姿にゴクリと喉を鳴らす。
なんだか今日はイケそうな気がする…!
つまみを入れた皿を持って心の中で意気込み、悟られないよう平常心でテーブルへ向かった。
「改めて乾杯」
小さく缶をぶつけてくいっと煽ると、やけに無音の部屋が気になってテレビのリモコンに手を伸ばす。
内心暴れ出しそうな心臓。
それにこの距離感とアルコール。
おまけに同意の上でうちにやって来たとくれば。
いつそういう状況になってもおかしくはない。
斜め左に座る松本くんをチラリと見遣る。
酒のせいかほんのり紅い首筋。
色白のそこに目を奪われかけたその時。